ここのところよくお話しする「力」があります。
それは、「1.1力」です。仲山進也さんの著書『アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方』で出会った言葉です。
ちなみに「アオアシ」はサッカー漫画です。ストーリーが面白いのはもちろんですが、組織やマネジメントを考える上でとても参考になります。ご興味のある方はぜひお読みください。
さて、「1.1力」ですが、仲山さんは以下のように説明しています。
“ふつうの状態を「1.0」と表現するとします。
ちょっとご機嫌、ちょっとポジティブな状態が「1.1」。
ちょっと不機嫌、ちょっとネガティブな状態が「0.9」です。
「1.1」の人と「0.9」の人が一緒にプレーするとしましょう。
1.1と0.9を掛け合わせるイメージです。
これ、計算してみると、
1.1×0.9=0.99
になります。”
いかがでしょうか。少し補足します。
1.0×1.0=1.0ですが、1.1×0.9=0.99になります。
つまり、ポジティブな人が1人いても、ネガティブな人が1人いたら、1.0を下回ってしまうのです。一人ひとりのちょっとした気持ちの状態が、チーム全体に影響を及ぼしてしまうことを表しています。
この気持ちの問題は、相手との考え方の違いから生まれてくることがあります。サッカーでいえば、「なんで今パスしてくれなかったんだよ」という状況です。
そうやって責め続けると、自分はもとより、相手の心も0.9になってしまいます。チームのムードはどんどん悪くなり、パフォーマンスも落ちるでしょう。
同じ内容を伝えるにしても、気持ちをコントロールすることがとても大切です。「このタイミングでパスをもらえるとチャンスを広げられる、次は頼むよ」とわずか0.1で良いから、ポジティブに接することでチームを元気にすることができます。
チームで仕事をしていれば、意見が異なるのは当然です。
それをチャンスにできるかどうか。「どうせ分かってくれない」とか「いや、それは間違っている」という風に、みんなが0.9になってしまったら、チームは崩壊してしまいます。
0.1を足すか、引くかは自分の選択次第です。
メンバー全員が、葛藤しながらも0.1を足すリーダーシップを発揮できるチームは間違いなく強いでしょう。
そのようなリーダーシップは、個人で動いている限りは発揮されようがありません。好きなようにやれるからです。場合によっては、一人のほうが成果がでる仕事もあるでしょう。
ただ、それではすぐに限界を迎えてしまいます。この場合、成果の限界以上に人としての成長の限界が大きいのです。
チームによって人は育ち、その循環がチームを強くします。特にリーダーには、ほんのわずかな前向きさを拾い上げ承認する「1.1力」の発揮が大切です。ときに立ち止まって自分の言動を振返ってみましょう。