今回は、経営に活かす外部環境の切り口について考えてみます。
結論から言いますと、
①新聞等から得られる全体感
②日銀短観などから得られる、規模別・業界別の状況
③目の前の状況、お客様や取引先様から感じる状況
という3つの切り口で考えていただくとよいのではないかと思います。
2023年7月21日の日経新聞5面に、「低成長、インフレと併存 今年度1.3%に下方修正」という記事がありました。
また、同日の2面に「中小企業賃上げ、最低賃金「産業別」に活路」という記事があり、積極的な最低賃金引上げを促進する記事がありました。
これらの記事に限らず経営をしていく上での全体像としては、
「日本全体で見れば低成長が続いており、世界的な経済環境の圧力からコストプッシュ型のインフレが続いている。少子高齢化の人口構造から労働力不足の中で賃金も上昇圧力があり、賃上げが採用競争力を確保する上での最低条件になっている」
というような認識をお持ちのことと思います。
「国内景気はあまりよくはないが、付加価値を高める経営を行い、一人あたりの付加価値額を上げることで賃上げやその他のコストの上昇を受けても健全に経営を行う必要がある。
先々コストプッシュ型のインフレから、だんだんと賃金が上昇する中で需要を回復させることにより、ディマンドプル型のインフレにシフトすることで景気の回復も伴った緩やかなインフレにつながっていけばよい。」
といった見解も、ある程度皆さま共通認識があるのではないでしょうか。
一方で、その中でこちらの記事をお読みの皆さまの会社や周りの業界の状況はいかがでしょうか。
景気の全体像をとらえることは大切とても大切です(①新聞等から得られる全体感)。一方で、もう少し解像度を上げて、いくつかの段階で外部環境を捉えることも大切です。
その際にお勧めなのは、「②日銀短観などによって、規模別・業界別の状況を深堀すること」、「③目の前の状況、お客様や取引先様から感じる状況」を確認して、それらを比較してみることです。
全体の景況感だけではなく、より具体的な情景が見えてきます。特に②の規模別・業界別の状況を日銀短観で見てみると、業界別に大きく状況が異なることがわかります。
以下の抜粋で見ると、非製造業の「飲食宿泊サービス」の回復が顕著であり、大企業をはじめとして中小企業に至るまで回復しています。
一方で、製造業の「木材・木製品」などで見ると、大企業から中小企業に至るまで軒並み業況が良くありません。また、特に製造業の中では、大企業に対して中小企業の状況が悪いことが見て取れると思います。このような、景気の全体感と、個別の業種や規模による違いを把握した上で、自社の置かれている状況や主要なお客様の状況などを認識しておくとよいでしょう。
2023年6月調査の日銀短観
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2306.pdf
自社周辺の現状認識の解像度が上がること、およびお客様がおかれている状況を認識することで経営に活かせることが多くあると思います。また、景気の全体感と個別の業界の違いを比較してその原因を考えること、情報収集することによって経営における打ち手が変わっていくことがあります。
例えば、値上げが全体的に波及している中で、業界の業績動向が厳しい木材・木製品の業界においても同様に値上げを推進することが本当に今のタイミングで妥当なのかどうか、といった論点など、意思決定をする上での重要な参考情報となることでしょう。
また、③目の前の状況、お客様や取引先様から感じる状況 についてですが、実際にお客様などとの取引や対話によって認識する情報を言います。当たり前のことだとお考えでしょうが、その情報を社内で定期的に集めているでしょうか。
たまたま入ってきた個別情報だけで、判断をしてしまっていないでしょうか。
社内の仕組みとして、お客様や取引先様からの情報を集める仕組みとともに、もちろん皆さんが率先して現場でお客様や取引先様の状況を知ることが大切です。
そして、その情報を、①景気の全体感、②規模別業界別の状況 と対比してみると、その企業個別の事情や地域的な状況が見えてきます。
このように、様々な切り口で外部状況を把握して、比較することによって、単なる一般論ではなく経営判断に具体的に活かせる智慧に精錬することができます。ご参考いただけますと幸いです。