ビッグモーターの不祥事が大々的に取り上げられています。私も、毎日放送の生番組で4回コメントを述べました。その一部がYouTubeに載り、それを見た私のお客さまがわざわざ電話してくれました。それもモンゴルのウランバートルからです。
タワンボグドという企業グループの創業者のバータルサイハンさんでした。２０１７年から３年間連続で、彼の企業グループの幹部たちに、ウランバートル郊外で講演したことがあります。世界最大のゲル（テント）で４００人の幹部たちに対して、日本語のできる幹部が通訳をしてくれ、６時間話したこともあります。
もともと知り合ったのは、日経新聞に載った私の記事がきっかけでした。「お金を追うな、仕事を追え」という私の師匠の故・藤本幸邦老師の言葉に関連してですが、それを読んだバータルサイハンさんが「モンゴルで幹部たちに講演してほしい」と依頼してきたのです。
彼は日本の電通大を卒業しており、日本語は私よりうまいくらいです。幹部のうち３０人ほども日本留学経験を持っています。バータルサイハンさんは、毎日日経新聞の電子版に目を通し、NHKのニュースを見ているそうです。そこで気になったビッグモーターに関連して、私のYouTubeでの毎日放送のコメントを見たと言って電話してきてくれたのです。
電話をいただいたので、「お仕事のほうはどうですか？」と私が尋ねると、「ようやく売上げが１０億米ドルの規模になりました」とのこと、事業を順調に伸ばしておられる様子でした。
彼の企業グループは、世界有数のカシミアの製造・販売（羽田空港第一ターミナルに「ゴビ」というお店も出しています）、銀行、トヨタのディーラー、ホテルなどを経営しています。モンゴルで有数の企業グループを一代で築いたのですが、彼の勉強熱心さと行動力にはいつも目を見張るものがあります。
そのトヨタディーラーを訪ねた時のことです。モンゴルは日本よりかなり所得が低いので、多くの人がローンを組んで車を買うとのことでした。その際には当然、銀行が必要で、ディーラーの中には銀行のブースがありました。そこで車購入と同時にローンを組めるのですが、驚いたことに、彼のグループの銀行のみならず、他の銀行も出店していたのです。
「自分の系列だけだと甘えが出ますから」とバータルサイハンさんは説明してくれました。保険会社も、自社系列だけでなく他の２社の合計３社がカウンターを出しており、お客さまの選択肢を増やすとともに、自社グループの甘えをけん制することを行っていました。お客さまに対する価値を高めていたのです。
「お金を追うな、仕事を追え」という言葉をきっかけに私に講演を頼んでくるほどの経営者ですから、お客さま第一は当然と言えば当然ですが、それを貫いて事業を大きくしているのです。
コロナも明けたので、来年またモンゴルで講演してくださいと電話の最後におっしゃってくれましたが、ビッグモーターの経営者には彼の爪の垢でも煎じて飲んでほしいものだと思いました。