また銀行のシステムが止まることがあるのか | コンサルタントコラム | 中堅・中小企業向け経営コンサルティングの小宮コンサルタンツ
loginKC会員専用お問い合わせ

コンサルタントコラム

ホームchevron_rightコンサルタントコラムchevron_rightまた銀行のシステムが止まることがあるのか

また銀行のシステムが止まることがあるのか

時事トピック
2023.10.25

10月10日~12日にかけて銀行口座より振り込みができなかったり、取引先よりの入金がなく、困った経営者の方も多かったのではないでしょうか。

金融機関同士の資金のやり取りを担う全国銀行データ通信システム(以後、全銀システム)のシステム障害が発生し、メガバンクなど10の金融機関で他行宛ての振り込みができなくなり、企業間の振り込みなど計255万件の送金が滞りました。障害は10日朝に発生し、復旧したのは12日です。この2日間は振り込みや入金が行われず、困っていた人は沢山いたのです。

全銀システムは1,000超の金融機関が接続し、1日平均13兆円の送金に利用されている日本の金融システムの根幹です。1973年に稼働が始まり50年が経過していますが、実は対外的に影響を与えるシステム障害は今回が初めてでした。国内をほぼ網羅する規模やその安全性を国際的にも評価されていましたが、今回は残念ながらその評価を落としてしまいました。

これまでシステム障害がなかったのに、なぜ今回は発生してしまったのでしょうか。

システム障害が発生した原因は、各銀行と全銀システムをつなぐ「中継コンピューター」という機器で障害が発生したためと発表されています。この中継コンピューターで銀行のデータを全銀システムのデータに読み替えたり、手数料のチェックを行うのですが、この機能が正常に動かった可能性があり、そのことで全銀システムが止まったのです。なお、中継コンピューターはシステム障害の直前の107日~9日に更新作業を行っていました。

直接の原因は上記の通りですが、報道を見ているともっと本質的な原因がありました。それは「テスト不足」と「障害発生時の準備不足」です。

まず、「テスト不足」については、7日~9日の更新作業でテストを行ったのですが、網羅的なテストが実施されていなかったとされています。可能性があるケースについてテストが行われていたら、障害は防げていたかもしれません。

また、障害の復旧に2日間かかってしまったのは、「障害発生時の準備不足」が考えられます。50年間システム障害が発生していなかったこともあり、システム障害を前提とした準備が行われていなかったとされています。社会の重要インフラであるため、止まることを前提とすることは許されない雰囲気がシステムの開発現場にはあったとも言われます。このような障害時の準備不足が、復旧までに2日間かかった一因となりました。全銀システムを運営する全銀ネットは、今後再発防止に向けたタスクフォースを立ち上げると報道されています。ここでは再発防止だけではなく、障害発生時の対応についても考えるべきではないでしょうか。

今回のシステム障害の原因を確認していると、決して全銀システムの問題だけではないように感じます。事前のシミュレーションは可能な限りベストを尽くしつつ、それでも障害は発生するものと考え、障害時の準備も進めたいものです。


お問い合わせCONTACT US

コンサルティング、セミナー、KC会員についてなど、
お気軽にご相談ください。