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M&Aに関する税制優遇案について

時事トピック
2023.12.08

25日の日経朝刊一面に、中小企業の買収を促すということで、中小企業のM&Aに関する税負担を軽くする改正案のトピックが載っていました。

具体的には、買収した株式取得額の最大100%を、税務上の費用(以下、損金)に算入できるようにするということです。(現行の制度では、株式取得額の70%。これを100%にするという制度改正案です。)

例えば、5億円の会社をM&Aした場合に、5億円がそのまま損金になって、その年の法人税等の負担が軽減されるということになります。

 日本の実効税率が30%と仮に想定すると、5億円の会社をM&Aした場合には、その年には5億円× 30%1.5億円の節税効果があることになります。
もちろん、5億円の課税所得が出ていなければ、その分は繰越欠損金として、翌年以後に繰り越されることになりますので、その年のキャッシュフローのインパクトはありません。

 では、この税制については、永久に税金が免除されるかと言うと、そのような事はありません。損金算入した準備金については、5年後から5年間かけて均等に課税対象となる益金に組み込まれることになります。先程の例で言えば、5億円が損金算入されたので、5年均等となると毎年1億円分の課税所得が追加されることになります。実効税率を30%とすると、5年後から0.3億円の法人税の負担が5年間続くことになります。

結局10年通してみると、税負担額は変わりません。

税負担で言えば
M&A初年度 ⇒△1.5億円
6年目 0.3億円
7年目 0.3億円
8年目 0.3億円
9年目 0.3億円
10年目 0.3億円
10年間合計 ±0円

なお、経済産業省はこの繰り入れの期間を5年から20年にするように求めているということです。仮に上記の例で20年となると、6年目以降 +0.075億円(750万円)でそれが25年目まで続くことになります。

 M&Aをして資金需要が出たときに、税金を繰り延べることによって当初の資金負担を抑えると言う趣旨です。

当然ながら、M&Aの効果を5年目以降でしっかりと結実させなければ、その後に追加された税負担を対応することが難しくなるでしょう。

 注意点としては、

・経営力向上計画の認定を受けるという手続きが必要な点(ここでは詳細な説明は省きますが、何もしないで中小企業だから適用を受けられるというわけではないことは認識しておいてください)

・準備金としての経理処理をするため、純資産が少ない会社においては適用を受けることによって決算書の見栄えが悪くなる(自己資本比率が低下する など)

その他、適用に当たっては詳細を確認する必要があります。

 この税制が施行される背景には、皆様もご存知の通り、経営者の高齢化問題と後継者不足の問題があります。

 経営者の平均年齢は60歳を超えており、後継者不在率は60%を超えています。このままいくと、内部承継は進まずに、廃業が多発することになるので、外部承継としてのM&Aを国としても促進する趣旨で、このような改正を行っています。

 日本の市場はマクロ的に見れば縮小傾向にあることは人口構造からも想定されますが、後継者不足による廃業などによって、1社あたりの市場規模は必ずしも縮小傾向にあるわけではありません。

 事業上において必要なM&Aを活用して、積極的な成長を実現することは日本経済を支えることにもなるため、それを政策としても支援しようという流れということができるでしょう。

 M&Aを検討されている方は、上記の注意点、その他の詳細を確認の上で積極的に検討をしてみてもよいのではないでしょうか。日本経済には外部承継としてのM&Aが必要であり、それを事業の成長につなげられれば社会貢献・社会課題への貢献、にもつなげることができるでしょう。


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