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「台湾総統選と米中戦争」

小宮一慶のモノの見方・考え方
2024.01.23

注目の台湾総統選挙が1月13日に実施され、反中国派の与党民進党の頼清徳氏が蔡英文氏を継いで新総統に選ばれました。このことが今後の中台情勢や極東アジア情勢にどういう影響を及ぼすかを考えてみましょう。結論的には、戦争が起こる可能性が高まったということです。
昨年、自衛隊が想定しているシナリオとして、中国が台湾に侵攻する場合には、①ミサイルで台湾を攻撃する、次に②台湾に航空勢力を使って攻撃する、そして③台湾海峡を陸上勢力が渡り台湾を占拠するということが一部新聞に報じられました。反中国派の民進党が台湾の政権を担っている場合には2025年にも起こるだろうとの意見もあります。
中国の習近平国家主席は、通常は2期10年の在任期間を超えて第3期目に突入しています。若いころに文化大革命のせいで父親が地位を失い、自身も農村に「下放」され、過酷な少年時代を送った身としては、権力を失うことの怖さを身をもって知っており、3期にとどまらずさらに権力を維持しようとするかもしれません。
そして、習氏にとっては、台湾統一が悲願であり、武力行使も辞さないことを明言しています。権力基盤を強固にするためにも、明言した台湾統一を是が非でも成し遂げたいことは間違いありません。軍事的、経済的にさらにプレッシャーを強めるでしょう。
ただし、中国には武力行使に慎重にならざるを得ない理由があります。もし、中国が台湾に武力行使をすると米国も軍事的介入をする可能性があるからです。中国としては、次の二つの理由で米国との軍事衝突は極力避けたいと考えられます。①米国には勝てないから。世界最強の軍事力に勝てる国はまずありません。②自国領土や台湾などが戦場となる可能性が高いこと。いずれにしても、中国が米国と軍事的に衝突すれば、中国は軍事的、
経済的、政治的に大きなダメージを受ける可能性があります。
一方、米国の一部には、戦争に前向きな勢力があります。ひとつは軍需産業です。ウクライナでも米国製の武器が大量に供与されていますが、台湾有事となれば、軍需産業の活躍余地はさらに広がります。もうひとつは軍隊です。米国では、日本ほどではないにせよ財政状況が悪く、軍の縮小を唱える声があります。太平洋の制海権については、今は日本から沖縄、台湾を結ぶ「第一列島線」で中国と米国が対峙していますが、日本から真南にグアム、オーストラリアを結ぶ「第二列島線」まで下げても良いのではないかという意見もあります。そうした際に、台湾有事となれば、米軍の存在意義は高まります。
ブッシュ政権の時に、「大量破壊兵器がある」という報告をもとにイラクのフセイン政権を崩壊に追い込んだ米国ですが、結局は大量破壊兵器などありませんでした。戦争のきっかけを作りたかった嘘によりイラク一国が滅んだわけです。今回もそのようなことが起こらないことを願っていますが、11月の米国大統領選挙もあり、今後の米国の動きからは目が離せません。
私は台湾が好きで、コロナ前にはほぼ毎年台湾を訪れていました。昨年もコロナがほぼ明けたということで2度台湾を訪問しました。以前は、仕事や旅行などで香港もよく訪問しましたが、中国の支配強化以降は行きたくなくなりました。中国本土も同様です。台湾にそんな日が来ないことを心より願っていますが、米中戦争も避けなければならないことは言うまでもありません。日本の果たすべき役割も大きいですが、今の政権ではそれどころでないことはとても残念なことです。


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