日本の株価が堅調な上昇を続け、バブル崩壊前の日経平均株価を上回るかどうかが注目されるようになっています。不動産価格も首都圏を中心に上昇を続けています。不動産経済研究所が1月25日に発表した内容によると、2023年の東京23区の新築マンション価格が前年比39.4%上昇の1億1483万円で、データを遡れる1974年以降で初めて1億円を突破したそうです。
今回の株価や不動産価格もバブルではないかという言われ方をすることもあります。果たしてそうなのでしょうか。90年代前半のバブル経済崩壊時と今とを比較すると、当時とは大きく異なる状況が見えてきます。
株価に関連し、PBR(=株価純資産倍率=株式の時価が1株あたりの純資産の何倍にあたるか)が話題になることが多くなりました。「PBR1倍割れ」の状態は、理論的に株式価値よりも解散価値の方が高いという状態を表します。企業が今後事業継続するよりも、解散して資産を株主に分配したほうが高い金額価値になると評価されてしまっているわけです。
企業活動を行う以上、その企業が持ちうる資産を使って商品・サービスを生み出し、必要としている買い手に届け、結果として利益を出す構造が成り立っているはずです。そのことを前提にすると、PBRは最低でも1倍以上の状態が基本だと言えます。他国ではそうなっていて、PBR1倍以上が一般的な状態です。
89年バブル期のPBRは5倍以上ありました。1月10日の日経新聞記事「企業、今こそ攻めの好機」によると、日経平均を構成する225銘柄中、PBRが1倍を割っている93銘柄がPBR1倍になるだけで、日経平均は3万6154円になると試算できるそうです(本記事の投稿時点で、日経平均株価はこれを上回っているかもしれません)。今の株価がバブル当時とは異なり、史上最高値更新も実態のある状況だということがうかがえます。
不動産に関しても、バブル当時とは大きく異なっていることも指摘できます。バブル当時は、「山手線内側の土地価格で、米国全土が買える」などというデータが出たこともありました。今振り返ってみれば、日本国外の価格と比較しても日本国内の価格は不自然なレベルで上がっていたものと想像できます。日本国内はもちろん、国外の個人が簡単に買えるようなものではありませんでした。
しかし、それ以降他国の経済力が相対的に日本を上回る勢いで高くなっていき、今では不動産に関しても株同様、外国人投資家が積極的に日本市場で買い求めている状況です。
投資用だけではなく、実需の増加も見込まれます。人の移動が今後さらに盛んになるにつれ、日本にセカンドハウスなどの居住用不動産を持ちたいという海外の買い手のニーズが高まることが予想されます。不動産を商品化するために必要な資材費や人件費も上がり続けています。これらのことも、価格の上昇要因になります。
かつて以上に、資金は優良・割安な案件を求め、国境を越えて移動し投資されるようになっています。日本国内では買い手がつかなくても、他国よりも日本にあるもののほうが優良・割安だと判断されれば、国外から買い手がつくことになります。
以上見てきたようなことを踏まえると、バブル崩壊前の記憶のイメージで「上がり過ぎではないか」「そのうち下がる」といった感覚で語ることは適切とは言えず、価格上昇基調を所与のものと捉えて自社の事業活動や自身の資産管理に活用すべきなのかもしれません。