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「できない」と言えない組織

知恵のバトン
2024.02.13

先月末にトヨタ自動車グループの不正が次々と明らかになりました。1月31日付の日本経済新聞の記事に、社内の様子を表す気になる記載がありました。これらの企業では、厳しい量産開始日の設定に「できない」と言えない、相談しても「で?」と言われるだけ、どうせ声を上げても何も変わらない、という企業風土だったそうです。
他の同じような問題を起こした企業の例と同様、従業員の方たちが不正への疑問を持ちながら、黙殺されることで、諦めるようになっていった様子が想像できます。

不正は、積み上げてきた企業の信用が一瞬で崩れてしまうため、勿論よくないことです。
しかし結果として起きた不正からは、それを起こしてしまう組織と社員がどれだけ「良くない状態」にあるのかが示されていると思います。その状態を2つの観点から見てみます。

ひとつは、「お客さまに誠実であることを一番に据えられていない」ということです。
納期を守ることはお客さまのために重要ですが、品質を守ることはお客さまの安全のために明らかに納期に優先すべきことです。にもかかわらず、自社の都合が優先される論理がまかり通っていたということになります。自社の論理とお客さまへの誠実さの天秤を間違えていないか、頭では分かっていても、ついつい自己保身や内向きの原理によって放っておくと起きるものだという認識を持ち、心してかかることが重要だと思います。

ふたつめは、「従業員一人ひとりの力を活かせない組織になっている」ということです。従業員が気持ちを殺して機械のように仕事をすることを助長しています。現場の声に耳を傾け、問題は何か、どのように解決するべきか、一緒に考えることなくして、良い仕事はできません。商品やサービス、事業がどんどん良くなるためには、お客様の声を直接聞く役割、商品やサービスを生み出しお届けする役割を担う現場の一人ひとりが声を上げることを奨励し、皆で共有し工夫することが第一歩なのです。事件が起きたような企業風土では、環境の変化に対応し事業を成長させていくことなど、とても難しいでしょう。

「気合いで何とかしよう」「やればできる」とは、一定世代の上司がよく言いそうです。私自身、根性論で育ったところがありますから、言いたい気持ちも理解はできます。しかし、不正を起こすまでには至らなくとも、叱咤激励や目標達成と表裏一体で、大切なことを見失った「強制」が行われていないか、お客さまが離れ、働く人が離れていく前に、今一度省みる必要がありそうです。


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