今月の第3回経営実践セミナーで、1コマ90分登壇させていただきました。
この回のテーマは「注目企業の決算分析と実践的財務諸表の読み方」ということで、毎年3つの企業を取り上げて分析しています。
このメルマガをご覧になっている方は、ビジネスパーソンの方がほとんどかと思いますが、普段から財務諸表の分析をされていますでしょうか?経営者の方であれば、もちろん財務諸表を見る機会はあると思いますが、実は一歩踏み込んで分析する機会はあまりない、という方も多いのではないでしょうか。私は前職の帝国データバンクの調査員時代を含め、これまで2,000社以上の企業の財務諸表を分析してきました。財務諸表を分析することで、企業がどう変化しているのか、何が強みで何が弱みなのか、といったことが客観的に見えてきます。財務諸表は、飛行機のさまざまな計器に例えられることがあります。財務諸表を見ずに経営することは、計器を見ずに感覚だけで乗り物を運転しているようなものです。経営者・経営幹部の方はもちろん、将来そのようなポジションを目指す方にも、ぜひ財務諸表を読み解くスキルを身につけてほしいと思います。
では、具体的に財務諸表分析をどう使うのか。今回は、二つの使い方を紹介したいと思います。
一つ目は、「健康診断」として使うことです。1年前、2年前の自社の財務諸表と比較して、分析数値がどう変化しているのかを定期的に調べます。健康診断で定期的にコレステロール値や血圧などを調べるのと同じです。もし数値が悪化していれば、健康診断と同じように「精密検査」を実施します。例えば、在庫水準が異常に高まっていれば倉庫に行って不良在庫がたまっていないか確認する。特定の営業所の粗利率が大幅に低下していたら、営業所に行って安売りをしていないか確認する、といった具合です。まずはざっくりと数値を確認し、異常値が出ていれば、その要因を深掘りして対応するわけです。このように定期的に財務諸表を分析することで、問題が大きくなる前に早い段階で手を打つことが可能になります。
二つ目は、「同業他社との比較」です。同業他社の財務諸表を分析し、収益性や安全性、一人当たりの売上や利益、資産全体に占める有形固定資産の割合などを多面的に比較します。同じようなビジネスをしていると思っていても、想定以上に収益性の高い競合企業が見つかることがあります。そのようなベンチマークしたい競合企業があれば、幹部メンバーで「なぜこの会社はこれほど儲かっているのか」を考えてもらいます。自社で設備を持ち、内製化しているプロセスがある。商流の中でより上流のポジションにいる。小規模な顧客にターゲットを絞っている。仕入れの多くを海外から行うことで原価を抑えている――など、要因はさまざまです。財務諸表に表れる数字は、企業活動の「結果」です。高収益という結果が出ているのであれば、そこには必ず何らかの原因があります。その原因を経験豊富なメンバーでさまざまな視点から深掘りし、要因を特定したうえで、「自社に取り入れられることはないか」を考えてもらいます。そう考えると、儲かっている会社の財務諸表は、「儲かるヒントの宝の山」と言っても過言ではないでしょう。
このように、財務諸表分析は健全な企業経営に不可欠なものです。ぜひ一歩踏み込んで、自社や同業他社の財務諸表を分析してみてください。
平野 薫