さまざまな会社の会議や研修に関わっていると、時折、気になることがあります。
「何をやったか」はたくさん報告されるのに、「やってみて、何がわかったのか」は、意外と話されていないのです。
「先月は新規訪問を30件やりました」
「部下と面談しました」
「新しいキャンペーンを実施しました」
こうした報告を受けると、つい聞きたくなります。
「で、次はどうする?」
もちろん、次の行動を決めることは大切です。しかし、その前に一つ、問いを挟んでみてはどうでしょうか。
「やってみて、何がわかった?」
たとえば、若手社員の育成が課題となり、上司が「月1回、面談をする」と決めたとします。1か月後に振り返ってみると、「面談は実施しました。でも、あまり変化がありませんでした」という報告があった。そこで、「では、来月から月2回にしましょう」と決める。もちろん、それが必要なこともあります。ただ、月1回やってうまくいかなかったことを、月2回やればうまくいくのでしょうか。
ここで、「面談をやってみて、何がわかったのか?」と聞いてみます。
すると、「思ったより本人が話してくれなかった」ということが出てくるかもしれません。
さらに、「なぜ話してくれなかったのだろう?」と考えてみる。
「こちらがアドバイスしすぎていたのかもしれない」
さらに考えてみると、
「そもそも自分は、上司なのだから答えを教えなければならないと思っていたのかもしれない」
…そんなことに気づくかもしれません。
「面談の回数が足りなかった」これも一つの「わかったこと」です。
しかし、「こちらが話しすぎていた」となると、自分たちのやり方に目が向きます。
さらに、「上司は答えを持っていなければならない、と自分は思い込んでいた」となれば、自分たちが当たり前だと思っていた考え方そのものが見えてきます。
同じ「振り返り」でも、ずいぶん違います。
会社の中では、毎日さまざまなことが起きています。
営業に行く。失注する。
採用する。辞められる。
新しい制度をつくる。思ったように使われない。
会議を増やす。でも、なかなか連携がよくならない。
こうした経験をたくさんしている会社が、必ずしも強くなるとは限りません。
経験しただけでは、経験は私たちの力にはならないからです。
重要なのは、その経験から何を学んだのかです。
中小企業の経営者の方々と話していると、本当にさまざまなことに取り組まれていると感じます。新規事業、人材育成、DX、評価制度、会議改革、理念浸透……。
むしろ、「何もしていない会社」の方が少ないでしょう。
それでも、なかなか会社が変わらない。
そんなとき、「もっとやらなければ」と考える前に、一度問い直してみてもよいのかもしれません。
「私たちは、やったことから何をわかったのだろう」
そして、もう一つ。
「その経験によって、自分たちが当たり前だと思っていたことの何が変わったのだろう」
ここまで話せるようになると、会議は単なる進捗管理の場ではなくなります。
経験から学ぶ場になります。
そして、一人ひとりが経験から得た「わかったこと」が共有されれば、それは少しずつ、その会社の知恵になっていきます。
「やったこと」→「わかったこと」→「次にやること」とても単純な三つの問いです。
このとき、真ん中の「わかったこと」をどこまで深く考えられるか。
そこに、「忙しく動き続ける会社」と「経験するたびに少しずつ賢くなる会社」の違いがあるように思います。
馬場 秀樹