「経験に勝るものはない」とよく言います。
確かにその通りだと思います。仕事でも、実際にやってみなければ分からないことはたくさんあります。若手社員に「もっと経験を積ませたい」と考える経営者の方も多いでしょう。
でも、経験を積めば、人は必ず成長するのでしょうか。
アメリカの哲学者・教育思想家ジョン・デューイは、著書『経験と教育』の中で、すべての経験が人を成長させるわけではない、と論じています。それが冒頭のことばです。
これは、会社にも当てはまりそうですね。
「うちのお客さんは、こういうものを求めている」
「若手には、まだこの仕事は任せられない」
「この業界では、昔からこうやってきた」
こうした考えは、決して根拠のない思い込みではありません。むしろ、長年の経験から学んできたからこそ生まれた「習慣」なのでしょう。
ところが、その思い込みが強くなるほど、目の前で起きている変化を見えにくくしてしまうことがあります。
以前は喜ばれたサービスが、今も喜ばれるとは限らない。
かつて失敗した方法が、今も通用しないとは限らない。
「まだ任せられない」と思っていた若手も、任せてみれば意外な力を発揮するかもしれません。
経験は、私たちに多くのことを教えてくれます。
一方で、「世の中とはこういうものだ」という見方もつくります。
だから、ときには、
「この経験から何を学んだか」だけでなく、
「この経験によって、何を見なくなっているだろうか」
と考えてみることも必要なのかもしれません。
経験豊富な人が多い会社には、大きな財産があります。
その経験を安易な「正解」にするのではなく、次の可能性を見つけるために使いたい。
経験の長さよりも、経験から何度でも学び直せること。
変化の大きな時代において、これもまた会社の大切な力なのだと思います。
馬場 秀樹