「熊本地震のBCP、マニュアル5割で現場判断重視」(2026年9月20日)という記事がありました。
この中で金剛株式会社(熊本県)の田中社長は、次のように話しています。
・BCPマニュアルで定めるのは事業活動の50%とする
・マニュアル化しない50%は現場が柔軟に判断することで、最善を尽くす狙いがある
事前に想定しにくいことも現場では起きることから、そもそもすべてをマニュアル化することは困難です。もしマニュアル化できたとしても、かえって現場判断の足かせになってしまうことも考えられます。記事では、他にも「災害の発生から業務再開までの対応フローを紙1枚にまとめる」といった事例も紹介されており、BCPマニュアルはシンプルさが重要であることを実感しました。
本記事を読み、東日本大震災時のヤマト運輸の事例を思い出しました。災害に直面した際、本社からの指示を待つことなく、現場社員が救援物資の管理や配送を始めていました。
「3月11日からわずか数日後、宮城県気仙沼市や岩手県釜石市などの社員が、自分たちの避難所や被災地で救援物資の管理や配送を自発的に始めました。自らも被災し避難所で生活をしていた社員がこの活動を始めたのは、多くの善意ある救援物資が自治体の一時保管所に滞留し、その先に点在する多くの避難所まで到着していない現実を目の当たりにしたからです。ほかの被災地でも同様のボランティア配送が始まっていました。こうした現場の動きに対応し、本社は全被災地に適用できる組織的な支援制度を確立。」
こうした対応ができたのは、適切なマニュアルだけではなかったでしょう。その前提には、「全員経営」という考え方が社員に浸透し、現場社員が自ら考えて行動する組織文化があったことも大きかったのではないでしょうか。ヤマト運輸で「宅急便」を立ち上げた小倉昌男さんは、著書にて次のように話しています。
「『全員経営』とは、全社員が同じ経営目的に向かい、同じ目標を持つが、目標を達成するための方策は社員一人ひとりが自分で考えて実行する、つまり社員の自律的な行動に期待するのである。社員に目標は与えるが、会社側はやり方について命令したり指図したりせず、社員がその成果に責任をもって行動する、というものである。そんなことができるだろうかと、疑問を持つ方もいるかもしれないが、宅急便の場合は、それ以外にやりようがなかったのである。(中略)事実、実行してみると、働く人にとってもやり甲斐のある方式で、社員に楽しく働いてもらうことができた。」
出典:「経営学」小倉昌男著、日経BP社(P173)
何もかもをマニュアル化し、それに沿った行動を求められると社員は息苦しくなります。また、自身の創造性を発揮する場面も少なくなり、考える力が失われ、指示待ちになってしまうリスクもあります。一方、何の規律もない状態では、個人個人がバラバラとなってしまい、組織としてのまとまりがなくなるリスクがあります。
だからこそ、共通の土台となる「理念」や「規律」が必要です。そして、その土台の上で一人ひとりが自ら判断することで、創造性を発揮することができるようになります。これは、小倉さんが言われるように「やり甲斐」、「働きがい」につながります。本記事を通して、あらためて「規律の中の自由」の大切さを感じました。
まとめ
・日常的に「理念」を共有し、社員が判断するための土台をつくる
・「規律の中の自由」を、BCPを含めた組織運営に応用する
唐澤 恭平