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今週の経済の動きと経営の切り口 ~コロナの状況と日本経済、環境問題と世界経済~

経済トピック
2021.10.29

■コロナの状況と日本経済の状況

コロナの状況においては、10月25日に時短要請が解除されて正常化に向けて動き始めました。
ワクチンを2回接種した人の総人口に対する割合が7割を超えて、ようやくワクチン先進国に水準が追いついてきた状況です。※(14)

 

 

日本においては、ワクチン接種の頭打ちが8割程度ではないかと言われており感染力の強いデルタ型においては集団免疫に到達するかどうかのギリギリのラインではないかと思われます。集団免疫が有効になる免疫人口水準は、対象になるウイルスの実効再生産数(一人あたりの感染者が何人に感染させるか)に関連しています。デルタ株(実効再生産数5~9.5人程度と言われています)など感染力が強いウイルスについては、集団免疫が有効になる免疫人口割合も高くなります。※(15)

 

 

医療インフラについては、ネット診療について診療報酬の問題などで活用が進んでいないこと、および病床使用率が64%(東京都)にとどまるなど有効に活かされていないことなど問題はありますが、全体的にはワクチンの進行によって今後も波が来るにしても波の高さは軽減していく事はほぼ確実に見えているでしょう。※(16)、(18)

 

 

また、治療薬の開発が進んでいることからも在宅での対応可能性も高まることで医療キャパシティの切迫は限定的となり、コロナの影響は徐々に収束していくことが見えてきました。
(ワクチンも治療薬も存在しない新たなウイルスなどが出てきた場合の医療キャパシティの問題は、今後も継続課題にはなるでしょうが当面の緊急性は低いでしょう。)

 

 

ただそのような状況においても依然として日本の景気は弱く、需給ギャップがマイナスであることには変わりません。※(4)

そのような中で衆議院選挙、自民党は岸田首相を中心に「新しい資本主義」を提唱しています。

新自由主義と言われる行き過ぎた競争による格差拡大や社会分断を解消すると言う事ですが、10月27日の3面の記事にもあった通り、欧米が直面する問題と日本が抱える問題は根本的に異なります。

 

 

欧米はテクノロジーの浸透によって特に大企業中心とした成長の偏在により格差が拡大していると言う事が根本的な問題になっており、その土台には多大な付加価値を生み出す巨大IT企業などが存在しています
この中でFacebookは、かつてのたばこ産業のように中毒性や有害性を認識しながら放置した非難を受けています。「知りながら害をなすな」と言うドラッカーの言うプロフェッショナルの倫理が足りてないのかもしれません。今後この個別の企業の動向が与える影響にも注目が必要でしょう。

 

 

一方で、日本はコロナの影響によって飲食宿泊サービス業を中心として特定の業種が打撃を受けて下方面に格差が広がっている状況です。別に大企業などは大幅な成長を遂げているわけでもなく、ただ特に打撃を受けたところが弱ることによって格差が広がっていると言うような状況です。

コロナが収束の兆しを見せたとしても日本が抱える低成長の根本的な問題は解消されていません

 

 

■今後の日本に必要な方向性と企業経営

今の分配は国債の発行等で何とかなるかも分かりませんが、中長期的に安定した分配を図っていくためには成長による付加価値の創出がマストです。

また、コロナ禍を受けた緊急融資施策(ゼロゼロ融資と言われ、実質無利子、無担保の融資のことをいいます。民間には2021年の3月に終了しています。)によって中小企業中心として負債の水準が非常に高くなっています。負債をEBITDA(営業利益+減価償却費、キャッシュフローの創出能力を表すもの)で割ったEBITDA倍率を出すと中小企業は13.9倍になります。すべての企業で算出すると4.9倍と言うことなので、中小企業はそのキャッシュフローの創出能力に対して過剰な負債を負っている状況になっていると言えるでしょう。※(1)

 

 

今後中小企業が付加価値を創出しても、そこで生み出されたキャッシュフローは債務の弁済に回る割合が多くなるため事業投資に回っていかないと言う事態が発生します。また、現場は倒産件数は歴史的に少ない状況(2020一年上半期では2937件の倒産件数と言うことで、57年ぶりの少なさと言うことです。)※(2) ではありますが、これらの多大な負債の返済フェーズに入ったときにどのような状況になるか、今後飲食宿泊サービス業を中心とした事業再生の取り組みの記事もありました。とはいえ、傷んだ事業を正常化するだけでは今後の発展は望めません。

 

 

日本において必要な事は、人材投資と研究開発、事業投資など生産性そのものを高めることに対して有効な資金が循環していくことです。本来はそのような投資に向かうべき資金が債務の返済にだけ回ってしまうことのないようにしなければいけません。

 

これは、日本の国債、プライマリーバランス(社会保障や公共事業をはじめ様々な行政サービスを提供するための経費(政策的経費)を、税収等で賄えているかどうかを示す指標)についても同じことが言えるかもしれません。プライマリーバランスを大幅に黒字化して国債の返済をするような事は今の段階では避けた方が良いでしょう。むしろ、研究開発投資、人材育成として、その他事業投資を促進するための成長策戦略的投資を推進していくことが今の日本にとっては重要ではないかと思います。

 

 

政府財政支出の推移を見ても、生産的な投資への配分は2000年以降ほぼ増加していません。しかしながら移転的支出と言われる年金・医療などの社会保障費の支出負担が増加しており、そのことが財政問題を深刻化させているのです。
社会保障に関する改革が進まないのであれば、この傾向は人口構造の変化(更なる少子高齢化の進行)によってこの傾向は更に進んでいくことでしょう。だからといって生産的な投資を抑制すれば低成長というか横ばい経済の現状が続き世界の中で相対的に日本が地盤沈下していきます。

企業経営と同様に、投資の振り向け先が肝なのです。

 

 

今の日本は付加価値を生む能力が欠如しているのです。これはここ20年間30年間根本的な投資を怠ってきた日本の政策の失態であると言えるでしょう。投資選別能力、及び投資を結実させる実行力・PDCA力が求められます。

企業経営においても同じことが言えます。国も経営も、この事態を改善するためには「一人当たり付加価値額(≒一人あたり粗利)」を向上させる経営・政策を実施することと考えます。

 

 

国単位でこの指標を見ると、一人当たりGDPと言うことになります。日本の2020年の一人当たりGDPは約40,089ドルで、この金額もGDPと同様にここ30年間伸びていません。(出典:IMF)

一人当たりGDPが向上する事は、その国が豊かになると言う事でもあります。その国に住んでいる人の生活水準が具体的に向上することにつながるからです。

 

 

それは何も政府の政策投資だけで実現する話ではなく、それよりもむしろ民間の企業の活力によって生じるものです。皆さんが関わる会社の経営がそれぞれ付加価値を創出する能力を向上させて、GDPそのもの、また一人当たりGDPを向上させていくこと、これが国力の根本になると言う事でもあります。そのため、成長を推進していくことはもちろん会社のためでもありますが、国の為にもなると言うことです。

 

 

■世界経済の状況と環境問題

世界経済全体に言えば、米国の強さが際立っています。米国株は10月以降5.4%の上昇を示し、これに対して中国は0.4%の上昇にとどまっています。日本においてはマイナスに陥っていると言うことからも米国の強さが見て取れます。※(3)

 

 

米国では、インフレ観測が高まっておりブレークイーブンインフレ率(市場が予測する期待インフレ率)が2.94%まで上昇しています。※(5) これに対して、中国経済は前回も記載した通り4.9%成長予測と言うことで経済が停滞しつつあります。※(6) この主要因は、①電力の制限がかかっていることによって経済活動が圧迫されていること、および②中国恒大問題によって不動産バブルが崩壊の兆しを見せていること、そして、③ゼロコロナ政策によって経済の締め付けが行われていること、などが挙げられると考えられます。
特に、中国のGDPに占める不動産セクターの割合は約14%と言われており、不動産部門の停滞は中国経済に与える影響が甚大です。※(7)

 

 

電力の問題については、環境問題と密接につながっており、地域ごとのCO2排出目標とのバランスの中で石炭火力に制限がかかっている点や、石炭火力そのもののコストが上がっている影響もあります。

環境問題で言えば、このままで行くと2030年時点でCO2排出量は16%増加する見込みであるということです。※(20)

 

 

インドと中国がCO2排出量が減少に至らない影響が大きいでしょう。欧米、日本等がどれだけ削減したとしてもこのCO2排出シェアの大きい国がCO2削減の舵取りが遅れれば遅れるほど世界全体のCO2排出量は減少する事はないと言うことです。

日本においても、原発についての取り扱いがまだ明確ではありません。第6次エネルギー基本計画においても、2030年における原発の構成比は20%~22%ということで既存の原子力発電所を再稼働させる事は前提となっており、新設をすることについては議論が棚上げになっています。※(21)

 

 

また、COP26においても石炭火力の構成比が依然として2030年においても20%を占める見込みである日本に石炭火力ゼロへの圧力がかかっている状況です。※(22)

日本は、比較的CO2排出量が少ない火力発電として有効なLNGにおいては2週間分の備蓄能力しかないため輸入の増加ができません。※(23)

そのような状況も踏まえて石炭火力に依存をせざるをえない部分もあるのだと想定されます。

 

 

LNGにおいては、中長期的に見れば主力の電源構成ではなくなるためそこに対して備蓄能力をつけるための設備投資に踏み切れないと言う事でもあるのでしょうか。

いずれにしても、この衆議院選挙は日本の経済政策、安全保障、環境問題エネルギー政策の道筋をつける上で非常に重要なポイントになってきます。

これらの状況を踏まえて、適切な政策を行うであろう政党や人に対して有権者としての権利を行使するために投票にいきましょう。
投票行動は、民主主義社会における我々の具体的なアウトプットでもあります。具体的なアウトプットと言う行動に起こすと、次回以降も選挙において論点をインプットするようになります。これも経営や投資と同じで1つのアンテナの立て方でもあります。


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