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今月の深掘り経済指標 11月号 【消費者物価指数】 

経済トピック
2021.11.09

「今月の深掘り経済指標【消費者物価指数】」
今月取り上げる経済指標は、消費者物価指数です。この指標は消費者が実際購入する小売段階の商品価格動向を表します。
日銀が2013年1月からインフレ目標2%と設定しているのもこの消費者物価です。ちなみに日銀がなぜ物価を上げることを目標にしているのか考えたことはありますでしょうか。一般的に考えると物の値段は上がらない方が嬉しいはずです。それなのに国を挙げて物価を上昇させようとしています。

 

物価が上がるということを消費者の視点で考えてみます。
例えば以前から欲しいと思っていた1万円の商品があったとします。これが来月から1万1000円に値上がりするということが分かったらどうでしょう?きっと今月のうちの買っておこうかなという気になりますよね。

これが逆に来月から9000円に値下がりすると分かったら、買うのは来月以降にしようという気になると思います。つまり緩やかなインフレは消費マインドを刺激するということです

もちろんインフレに誘導する理由は企業の業績や賃金など他の視点もありますが、このような消費行動が景気を左右する一因になります。

 

それでは現在の消費者物価を見てみましょう。
9月の消費者物価指数(生鮮除く総合)を見ると前年比0.1%増となっています。上昇要因として昨今のエネルギー価格の上昇、下落要因として政府主導のスマホ料金引き下げなどがあり、結果的にほぼ横ばいとなっています

 

9月の輸入物価指数は前年比31.3%増、国内企業物価指数も前年比6.3%増と原油価格の高騰もあり大幅に増加していますが、現時点ではあまり消費者物価には反映されていません。
なお諸外国の消費者物価を見ると米国(9月)が前年比5.4%増、ユーロ圏(10月)が前年比4.1%と日本と違い大幅に上昇しています。諸外国の方がコロナ禍から経済が早く立ち直ったこともありますが、日本ではコストを消費者物価に転嫁しにくいという背景もあると考えられます。

 

最近では同じ価格で容量を減らすステルス値上げが増えています。経済学では「シュリンクフレーション」と呼ばれる現象です。以前500gだったプレーンヨーグルトが400gに減っていたり、よく見るとお弁当の容器が底上げされていたりします。近頃は納豆1パックがご飯一膳には足りない量にまで減ってきました。
SNSなどでは批判されることも多いステルス値上げですが、価格上昇を受け入れてもらえない中での苦肉の策といったところですね。

 

なお、現在世界中で販売している商品・サービスを見ても日本の安さは際立ちます。
例えば100円ショップのダイソーは為替にもよりますが、アメリカでは約160円、タイでは約210円、マカオでは約200円と日本よりも高く、世界中で日本が一番安い価格設定となっています
ディズニーランドもここ数年で何度も値上げしていますが、フロリダのディズニーランドの約1万4500円と比較するとだいぶ安く、こちらも世界で一番安い価格設定となっています。
コロナ前は訪日外国人観光客が大勢いましたが、日本の魅力の一つに安さがあったようです。

 

今後については、前述したように原油価格高騰の影響もあり、企業のコスト吸収も限界にきていると思います。緊急事態宣言も解除されリベンジ消費も期待される中、どこまで消費者物価がどこまで上昇していくのか注目したいところです。

 

「今月のKC景気指標ピックアップ」
■街角景気(=景気ウォッチャー調査)9月:42.1
まだ力強さはないものの8月から大幅改善しています。街角景気の数字を見ているとコロナの新規感染者数とほぼリンクして動いているのが分かりますね。10月からは多くの地域で飲食店のアルコール提供が解禁になり夜の繁華街の人出も増えました。先日タクシーに乗った際に聞いた話では、コロナ禍で廃業したタクシードライバーが多く、地域によっては週末はタクシー不足になっているそうです。
緊急事態宣言が明け、私自身も出張も増えてきました。減便の影響もあると思いますが先日乗った羽田-福岡便は満席と人流が戻りつつあるのを実感しています。

 

■鉱工業指数・生産指数9月:季調89.5、前月比-5.4%、前年比-2.3%
リーマンショック時と異なり、コロナ禍での製造業の立ち直りは意外と早かったです。年明け早々にはコロナ前の水準まで持ち直し業績も回復しています。モノ消費からコト消費と言われて久しいですが、コロナ禍でコト消費ができなくなった分、余ったお金がモノ消費に回されたのではないかと思います。
ただここにきて製造業の生産量が落ち込んでいます。大きな要因としてはDX化の進展による半導体不足です。製造業の調達現場の話を聞いていても、夏場のピーク時は通常の10倍近い価格で半導体部品を購入せざるを得ないほどだったようです。自動車各社の生産を見ても国内自動車メーカー8社の9月の世界生産は前年同月比35%減、国内生産だけ見ると50%減となっています
秋口になり半導体不足は若干回復してきましたが、中国の電力不足や東南アジアのロックダウンの影響で部品供給が滞っている企業も出てきており、100%のフル操業まではもう少し時間が掛かりそうです。

 

■企業倒産件数:9月505件
上半期(4月~9月)としては1964年度以来、57年ぶりの低水準となっています。政府や金融機関による新型コロナウイルス対応の融資が資金繰りを下支えしています。
コロナ禍で業種によっては間違いなく業績悪化しているにもかかわらず、これだけ倒産が減っているのは史上稀にみる資金調達環境のおかげだと言えます。ただこの資金繰り支援はいつかは終わりますし、雇用調整助成金の特例措置も延長を繰り返していますが、いつかは終わります。
コロナ禍でテレワークやオンラインコミュニケーションが定着し、人の流れやニーズが変わりました。コロナが完全に収束しても戻らない不可逆的な変化もあります。その影響を受ける企業はそれを見据えて事業を再構築できているかが問われます。飲食店も時短要請の協力金が打ち切られました。入金のタイミングは2ヶ月程度遅れるため年内の資金繰りは問題なさそうですが、年明けから厳しくなると考えられます。これからは政府としてもコロナ対策支援をどこで打ち切るのか、タイミングが非常に重要になってきます。

 

貿易通関:9月輸入6兆8410億円・輸入7兆4650億円
ここ数ヶ月で輸入が大幅に増えています。原油輸入額は円安・原油相場高騰の影響で金額ベースで90.6%増加とほぼ倍増しています。また言われるとそうかと思うかもしれませんがワクチン輸入の影響で医薬品も84.1%も増加しています。経常収支を改善し日本経済の安定させるためにも、国産のワクチンや治療薬の開発が必要だと感じます。


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