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今週の経済の動きと経営の切り口 ~北京冬季オリンピックへの外交ボイコット、年末の消費動向について~

経済トピック
2021.12.10

今週全体で見れば、経済にとってそれほど大きな動きがあったわけではありません。
日本においては10月の消費支出が前年比-0.6%と、引き続き弱い景気状況であることが明るみに出ています。
10月は緊急事態宣言が解除された月であったため、それであっても前年対比でマイナスであるということは消費・需要の弱さを示していると言えるのではないでしょうか。

新型コロナウィルスのオミクロン型の動向は未だ見えず、ただそれほど深刻な状況で推移していないというような中で、それぞれの立場において様々な意思決定や準備が行われている状況です。
中国は北京冬季オリンピックを控えてゼロコロナ政策での封じ込めを強力な政治体制で進めていますが、やはり国民の不満もたまっているような状況であることが明らかになってきました。
また北京冬季オリンピックについては、米国や英国・豪州が外交的ボイコットを決めるなど具体的な動きがありました。日本はいずれにしても立場を明確にする必要性があると考えます。

いくつかトピックをピックアップしたのでご覧いただければ幸いです。

 

 

■北京冬季オリンピックへの外交ボイコットについて

 

今週は、米国や英国、豪州が北京冬季オリンピックへの外交ボイコットを表明しました。

新疆ウイグル自治区等での人権侵害等を主な理由としています。

オリンピックは平和の祭典のため、人権侵害や台湾などに対しての圧力も含めて外交的にも参加を表明する事は、これらの人権侵害などを平和の祭典において問題がないと黙認していると受け取られかねない状況でもあります。

このオリンピックへの外交ボイコットについては、ある種踏み絵のような状況でもあり、米国側につくのか、中国側につくのかという難しい判断が迫られる状況です。
米中と両陣営に世の中が全く分割されているわけではなく、①明確な対立軸、②今後話し合いが行われる内容、および③協調していく分野に複雑に絡み合った状況の中で、それぞれの国はその判断がどのトピックに該当するのかを判断し意思表示をしていくということになるのでしょう。

 

少なくとも米国や英国は、人権侵害については①の明確な対立軸と位置づけ、意思表示をしたということになるのかと思います。

北京オリンピックへの外交ボイコットをしたからといってすべての分野において対立をしているわけではなく、「この論点については賛成しかねますよ」との意思表示を行うということなので、新疆ウイグル自治区における人権侵害についておかしいと判断できれば毅然とした態度を示す必要があるのではないかと個人的には考えます。

3つの判断軸の中で当然ながら①の明確な対立軸の分野が1番角が立つ事は間違いないと思いますが、どこまでのトピックを①に位置づけるのかについては、GDP世界第二位であり世界経済における経済的な影響力も増した中国との力関係において微妙に変わってくることなのでしょう。

米ソ冷戦時代と比べると、米中の対立については経済的には相互に密接な関係があり、単純に分離して考えることができないほど複雑な状況です。これは当面というか今後も変わらない構造と言えるでしょう。

テーブルの上で握手をしながら、テーブルの下では蹴り合いを行っているような複雑な状況です。

ただ、環境問題など③の強調していく分野については、なるべくテーブルの上に上げながら協調性を見せていくなど、見せ方を配慮しつつ、明確な対立軸に於いての毅然とした態度をとっていくという判断軸を明確にした外交姿勢が今後も求められるということでしょう。たとえば、今週の日経数字トピックにも挙げた「輸入における中国貿易の割合」※(29)で見ると、オーストラリアは中国との経済的結びつきが急速に強まっていますが、8日には首相が外交ボイコットを表明しています。

出典:日経新聞 12月8日(水) 30面 経済教室

 

人としての人生であれば、もっとシンプルに論語や菜根譚等に書かれていることに忠実に、そして松下幸之助さんや稲盛和夫さんがおっしゃるように、素直に謙虚に、そして感謝を忘れずに生きていくということなのでしょうが、国や企業ともなると様々な立場の人が存在し、それぞれに複雑な利害関係があります。

 

この複雑な利害関係に、明確なビジョンを示しそれぞれの立場に配慮したバランスを推進しながら状況判断をし、軌道修正を行っていくという難しい舵取りを行っていく必要があるのです。

企業経営においても似たところがあります。全てにおいて対立軸がない関係というものはなかなかあり得ません。
複雑な関係において、複雑さを残したまま解釈をしながら推進をしていく難しさがあります。

 

例えば同業他社との関係は、具体的な商品サービスをお客さまに選んでいただく際には、自社の商品サービス以外の選択肢となるため競合関係にある事は明白です。
一方で業界そのものを盛り上げていく状況においては、協調関係を保ちながら協力をしていく必要があります。例えば、自動車のEV開発などもそうでしょう。自社だけでは完結できない分野について、協調領域と競争領域を区分しながら、パートナー戦略を描いていく必要があります。

 

 

■年末の消費動向とオミクロン型コロナウィルスの状況

 

日本では引き続き新型コロナウィルスの感染者数は非常に低い状況で推移しています。しかしながら、オミクロン型のウィルスについては四例目が発見され、じわじわと感染リスクが高まっている雰囲気があります。

このような状況下でも米国や欧州などであれば世間では皆マスクはしていないケースが多いと思われますが、日本ではマスクをしっかりとつけて社会生活を営んでおり、日本人は慎重でありかつそれがウィルスの感染予防を成功させていることは間違いないと言えるのではないでしょうか。

 

一方で、その慎重さによって消費動向にはマイナス面があることも否めません。

社会の雰囲気や国民性といったものは、明確に消費行動に影響与えることになります。また、社会の雰囲気や国民性は、その国における制度や慣習にも影響を及ぼすためその社会の雰囲気や国民性といったものは一般的にはエスカレートしていくことになります。日本のコロナウィルスに対する保守性についてはこの顕著な例であり、かつ、他の分野においても同様のことが言えるでしょう。

 

慎重であり、社会的な雰囲気としてもまだまだ警戒モードの日本としては、消費においても不要不急の外出や会食を避ける傾向にあります。
だからこそ、それぞれの判断で不要不急では無いようなスペシャルな商品については需要が高まっており、一方で不要不急と判断できる日常的な食事については悪影響が出ているような状況です。

 

飲食業界については、外食大手のワタミがオミクロン型の報道で宴会予約がストップしコロナ前の8割減に戻ってしまったということです。一方で、高級レストランの平松は12月のレストラン総予約数はコロナ前の2019年よりも15%増加しているということです。
今後も、波としては緩やかになってくるかもしれませんが、コロナウィルスは様々な変化をして社会と共存し続けざるを得ないでしょう。そのような状況の中で、もともと慎重な国民性である日本において、不要不急の低いハードルにかかってしまうビジネスは根本的にやり方や見せ方を変えていく必要もあるのかもしれません。

 

飲食業に限って言えば、ただでさえ日本は牛丼に代表されるようにうまくて安くて早いが当たり前の、かなりある種ぜいたくな消費傾向にあります。
そして、そのような厳しい目を持つ消費者が、さらにウィルスに慎重になって不要不急な日常的な会食や食事を避けるようになるとすると、日本という国において飲食業を行うことのメリットが非常に少なくなってしまいます。
同じクオリティーの牛丼でも、例えばカナダのバンクーバーであれば1000円近い価格で提供されているということです。

低い価格で高いクオリティーの商品が海外においても提供できる体制が整えば、海外においてビジネスを行った方が付加価値が高いと言えるのではないかと思います。外食産業について、特に経営規模の大きい外食産業は、経営戦略として海外展開を行っていくことがもはや必須と言えるのではないかと思います。

 

旅行に関しては、オミクロン型といえども広がっているわけではないという状況の中では、比較的堅調に推移しているようです。ここでも、1泊300,000円の部屋が満室になるなど、付加価値の高い商品サービスに需要が集中している様が見て取れます。一方でビジネスにおける出張や会食などにおいては、大企業であればあるほどに感染からその拡大リスクが高く、まだコンプライアンス的にも厳しい状況であるため控えざるを得ないという状況になっています。
中堅中小企業においては、それほど神経質になっていない分野においても、ステークホルダーや社内外においての関係が多岐にわたる大企業においては慎重に、厳しめに判断せざるを得ないという事情もあるのでしょう。

 

また、例えばオミクロン型について言えば、急速なパンデミックにつながったときに規模が大きければ大きいほど対応を取るのに時間がかかってしまいます。そのため、先手先手で事前の対策を検討するとどうしても判断基準が厳しくなってしまうという事情もあります。

このように、外部環境においては、特にコロナウィルスに関しては様々な状況が変化していきます。そしてその外部環境の変化に対して、消費者である個人、企業、それぞれの立場や、嗜好性や、コンプライアンスなどの状況に応じて判断に差が出てきます。
新聞の記事に触れ、それぞれの当事者の違いによってどのような受け止め方や判断がなされるのかということに対して、アンテナを立てながら日々のビジネスや経営に活かしていただければと思います。

 

 

■企業の経営戦略探訪 帝国ホテル滞在型2倍

 

帝国ホテル東京は、タワー型の客室全体を長期滞在のサービスアパートメントの対象にすると発表しました。金額はレギュラーが従来通り30泊36万円からで、最高金額ではペントハウスの30泊210万円となります。
コロナ禍の長期化によって、高級ホテルでも安定的な収入を生み出す新たな動きが広がるかもしれません。

高級ホテルであっても「客単価」と「稼働率」が運営のポイントなります。もちろん毎日異なるお客さまが泊まってくれた方が客室単価は高くなりますが、客室単価を抑えてでも「30泊」などの長期滞在型のプランをラインナップすることで、長期間の部屋稼働が100%確保されるというメリットがありますまた、ラウンドリーサービスやその他のサービスについては別途定額制のサービスで利用できるということで、このような付随的なサービスからの収益を客室単価に積み上げることで、「客単価」の確保を期待しているということでしょう。

 

ホテルなど、施設や人員のコストが高い固定費型のビジネスについては稼働率を上げて少なくとも固定費の回収を図っていく必要があります。
とはいえ、1日1部屋あたりの顧客単価をある程度犠牲にしている部分もあるため、巡行の稼働状況となった場合の収益性については見劣りすることになりそうです。

 

先ほど触れたように、コロナ禍においても上質なものを求めるお客さまは依然として存在します。むしろコロナ前よりもその数が増えたと考えられます。
それはコロナ禍が結果として特定の業種を狙い撃ちすることとなり、2極化を進めたことも影響しています。

2極化されたうちの多くの資産を持つ側となっている人たちが、滞在型のホテルを活用してさらに付加価値を上げていく姿が目に浮かびます。
結果として狙い撃ちとなった飲食宿泊サービス業などの特定の業種を支える人達には支援が必要ではあるものの、経営という観点からはこれからのお客さまに選ばれ経営を力強く継続させていくためにも、帝国ホテルのように今後の社会に適合した選ばれ方、需要の変動による財務への影響を抑えた経営スタイル等を模索していく力強さも必要でしょう。

コロナ禍を受けた、それぞれの会社の経営方針はこのような観点から眺めてみると非常に勉強になります。
目的意識を持つとアンテナが立つということだと思います。


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