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今週の経済の動きと経営の切り口 ~コロナ禍・人口減社会で再認識される一人あたり付加価値額~

経済トピック
2021.12.17

「今週の経済の動き」については、「今週の日経新聞の数字トピック」と合わせてお読み頂くことで、より理解が深まる構成になっております。「数字トピック30」に記載している数字に関しては、※( )で番号を記載しておりますので、ぜひ参照くださいませ。

 

■全体感

 

今年も気がづけば残り少なくなってきました。あっという間に年末ですね。

年末といえば冬のボーナスが話題となりますが、今年は3年ぶりに増加に転じるようです。

また、業界的としては必ずしも活況まで至っていないものの、飲食店が募集するアルバイトの時給も人員体制の逼迫から上昇傾向にあるようです。このように、日本においても人件費の上昇が一部見られますが、海外に比較すると大幅に遅れています。

 

 

新型コロナウィルスの影響は、世界のエリアごとに異なっています。ワクチンの接種状況や、マスク着用などの公衆衛生に対する意識、人的交流のブロック(オミクロン型の場合はアフリカからの人流)など、様々な状況によって地域ごとに様相の変化があります。日本においては引き続き感染者数は非常に低く抑えられており、世界各国における状況に実感が湧きにくい現実があります。

 

しかしながら、日本においても1日の感染者数が一万人を超えた時期もあります。そのことを踏まえると決して油断できない状況であると言えるでしょう。しかしながら、ワクチン接種が進行している状況なので、重症者率や死亡者数については抑えられていると言うこともあり、全体的な脅威はだいぶ軽減されているとみても良いのでしょう。

 

米国は消費者物価指数の上昇率が前年比6.8%となり、5%を超えるインフレ率が継続している状況です。コロナがおさまりきらない状況においても金融緩和の縮小、来年に3回の利上げを進めていく方向ということで日本との差を感じます。※(6)

 

今回はコロナの状況や、中長期的に見た日本や世界の人口問題や将来のGDPについて記載しました。

 

■新型コロナウイルスの動向

 

日本は相変わらず感染者数が圧倒的に低い水準で推移しています。一方で、欧米や東南アジア、韓国も含めて感染者数が減少しません。

英国等はオミクロン型が主流になっている状況です。加えて、ロンドンなどは感染者の過半数がオミクロン型であるとされています、その他カナダのオンタリオ州や、米国ワシントン州など特定の地域においても20%~30%の新規感染者がオミクロン型となっています。※(23)

 

一方で、同じく感染者・死亡者数が減らない韓国においてはオミクロン型の感染者数は累計で128人にとどまっているようです。※(10)

デルタ型のコロナウィルスがワクチン接種をした高齢者の方を中心にブレイクスルー感染で広がっていると言うことです。ワクチン接種をしてからの免疫の持続期間については引き続き注意が必要で、ブースター接種が望まれるところです。とは言え、いまだにワクチン接種率が高まらない国がある中で、先進国のブースター接種のためのワクチンを優先することについては倫理的な問題があることも事実です。

OUR WORLD in Data によると世界全体で56.5%の方がワクチン接種を1回以上完了しているものの、低所得国においては同じくワクチンを1回以上接種している人口割合は未だに7.5%に留まっているということです。

 

感染者数が増えている他の国々においてもワクチンの接種率は6割から8割の間(韓国は二回接種人口割合が8割であり、78%の日本よりも高い)であり、日本と比べても大きな差があるとは言えない状況です。にもかかわらずこのような感染者数の差があることは専門家においても明確な原因が特定できないと言う状況のようです。

 

日本においては、他国のように行動制限をする必要は無い水準ではありますが、今後日本と同じ条件の他の国において感染者数が広がっている事実を踏まえ、最悪のケースも意識しながら活動する必要がありそうです。

特に日本におけるマスク着用や手洗い・各施設の入り口での手の消毒等の衛生面への配慮は、他の国で感染が広がっているにもかかわらず日本で感染が広がっていないことの大きな要因として現れているのではないかと思います。

 

年末年始の活動においても、引き続きマスクを着用していただいた上で適度に楽しんでいただくバランスが良いのかもしれません。この日本人の公衆衛生・清潔感に対する意識の高さは素晴らしいものがあると感じます。国家・国民性としての強みであることは間違いないでしょう。

コロナ禍前までとは異なる年末年始であることには変わりませんが、この程度の感染者で住んでいる中ではある程度楽しみたいところですね。

 

 

■日本の経済状況と、将来のGDP予測について

 

日本経済研究センターの試算によると日本の一人当たりGDPは2027年に韓国に逆転される可能性があるということです。GDPそのものが逆転されることはなさそうですがそれは韓国が日本よりも出生率も低く人口動態において差が縮まらないことに起因しています。GDPは人口が多い国の方が有利に働きます。※(4)

米中GDPは、2033年に逆転するとこれも日本経済研究センターの試算が求められました。※(8)

中国は人口が多いため、一人当たりGDPが向上することによるGDP全体の押し上げが多大であることがこの米中GDP逆転試算に影響しています。

ただし、このGDP逆転は本来2028年あたりであったにもかかわらず、中国政府による民間統制の強化による経済への悪影響によって、逆転時期が4〜5年を遅れることになりました。

 

国の本当の豊かさは一人当たりのGDPで図られるものと思います。なぜならば、一人当たりの生産性が高ければ一人当たりの暮らしも豊かになるからです。先に述べた米中における経済予測についても一人当たりGDPにおいては2033年においても中国が米国に迫ることはありません。2033年においても人口が倍以上違う予測が立っているからです。その国に住む人の豊かさの実感は、一人当たりGDPがトータルのGDPよりも実感に近いと言えるでしょう。

例えば北欧の国々は、一人当たりのGDPはとても高く国民は豊かさを実感しています。一方で人口が少ない分GDPの順位としては上位には食い込んで来ません。

 

会社の経営においても、全体の付加価値(≒粗利)を高めることも大切ですが、従業員さんの立場に立てば従業員さん一人当たりの付加価値額を高めることが従業員さんの待遇改善につながります。

 

人数が倍になって付加価値額が倍になったとしても、一人当たりの付加価値額が変わらないため、給料を上げるためには労働分配率(=総人件費÷付加価値額)を上げる必要があり会社の存続のための内部留保や、未来投資の原資が相対的に減ってしまうことになります。

 

だからこそ一人当たりの付加価値額を高める、つまりは一人当たりの生産性を高めることが重要になってくると言うことです。一人当たりの生産性を高めるためには、同じ事業展開をしているだけでは難しいです。一人当たりの生産性を高めるためには、新しい商品サービスの提供や、マーケティングとイノベーションによってお客さまが感じる価値を高めることによって単価を上げることが必要になります。

 

そのような単価を上げるマーケティングとイノベーションを行うためには、生産性投資が不可欠です。研究開発のコストや、設備投資による生産性の改善等を行いながら、かつ人材投資を行いマーケティングとイノベーションの質を上げていくことで結果として一人当たりの付加価値額が高まっていくことになります。

出典:日経新聞 12月5日(日) 1面

 

韓国は、一人当たりの研究開発投資額が高く(2020年のGDPに占める研究開発費割合は4.8%に上りイスラエルに続く世界第二位。)、このような将来に向けた投資の取り組みが一人当たりGDPの底上げにつながっていると考えることができるでしょう。もちろん、韓国においても未だ新型コロナウィルスの感染が収まらない状況と言ったこともあり、楽観できる状況ではありませんが、日本における将来に向けた投資が足りていない事は、この将来予測からも明らかであると言わざるを得ないでしょう。

 

国の投資がどうあれ、企業においても当然マーケティングとイノベーションを意識した生産性投資が求められます。

100,000円の給付手段に揺れている日本ですが、困っている人の救済においては必要なことではあるとは思うものの、戦略的投資についてしっかりと考える必要がある状況であると言えるでしょう。

 

 

■コロナ禍における人口減少と向き合い方について

 

12月15日の日経新聞に、「人口と世界」というコラムがありました。

 

ピータードラッカーは、「マネジメント」において人口動態はかなりの精度で先行き見込みが可能な指標であり、マーケティングとイノベーションを考える上で人口動態を参考にするべきと言うことを言っています。

人口は20世紀に4倍になりました。しかしながら、それぞれの国の発展によって産業段階が進んだ国は出生率が下がり人口減少の段階に入っていきます。

先程の一人当たり付加価値の部分で記載しましたが、人口が減少したとしても一人当たりのGDPが下がらなければ人としての豊かさは維持できることにはなります。

 

とは言え、日本においては、台湾情勢などに対しての地政学的なリスクが高まっていますこともあり、防衛費が増額する方向です。※(29)

このような国家的な事象に対する対応は、やはり一人当たりの付加価値をいくら高めたところで、GDP全体の規模が大きくないと対応できません。

GDP全体の規模が上がらないにもかかわらず防衛費を増やすと言う事は、財政状態をさらなる悪化に導くことになってしまいます。

将来における日本の社会保障を含めた財政問題について具体的に解決を図っていくためには、制度設計そのものの見直しも必要ですが、やはりトータルとしてGDPを向上させていただく必要もあると言うことです。

 

そして、新型コロナウィルスの影響によって移民などによる労働力の重要性を各国が再認識したということです。日本ではあまり実感はありませんが、米国や英国においては高齢者施設において介護士が足りず多くの高齢者が命を落とし、イタリアのナポリは労働を担う人が足りず誰もゴミを収集しない場所と化したということで、サービス業中心の先進国経済はまだ機械ではなく人の力が必要なことが証明されたということです。

これからの国家の力は、人口問題に直結しそして移民がその鍵を握っていると言う事です。もちろん、日本においては島国であると言うことあり、文化や治安の問題と国家そのものの力・人口問題の解決のトレードオフの問題に直面していると言ってもよいでしょう。とても非常に慎重に考えなければならない問題です。そもそも、日本の外国人労働者の方にとっての魅力が低下しており、仮に移民強化の方向に舵を切ったとしても、他国との相対的評価の中で時すでに遅しとなる可能性も高いです。

出典:日経新聞 12月6日(月) 1面

 

また、日本でも見られるように、新型コロナウィルスの影響によって出生率の低下がさらに進んでいます。

若い方たちは、子供が増えると地球に悪影響があるのではないかと考え出生率を下げていると言う話も聞かれるとのことです。

世界の若い方たちの中で、子供の数と地球環境が紐づけられているということを私はこの記事で初めて知りました。

 

世代間における価値観が大きく変わっている中で、新聞を始めとした様々な情報媒体に触れることによってこのような価値観ギャップについての認識をしていくこともこれからの経営では重要なことだと考えます。

 


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