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今週の経済の動きと経営の切り口 ~再認識する「マーケティング」と「イノベーション」の重要性~

経済トピック
2022.01.14

「今週の経済の動き」については、「今週の日経新聞の数字トピック」と合わせてお読み頂くことで、より理解が深まる構成になっております。「数字トピック」に関連る数字があるものは、トピック番号を※()で番号を記載しておりますので、ぜひ参照くださいませ。

 

今週の日本経済新聞の記事から、別コラム「数字トピック」にピックアップされている数字を軸に簡単に解説します。

 

今週は何といっても新型コロナウィルスのオミクロン株の影響で第6波がやってきたことが明確になった週でした。新規感染者数は18,000人以上(113日)に上っています。一方で冷静に捉えてみると重症者数はとても少なく(13日時点221人)、新型コロナウィルスと言う括り自体を経済活動とのバランスをとってどのように位置づけるかと言うことが問われる段階に来ていると思います。

※新規感染者数等は厚生労働省HPより

 

企業経営に関してのトピックとしては2021年は企業倒産件数が6000件超と言うことで、1964年の4212件に次ぐ低水準であったということです。先に述べた新型コロナウィルスの影響があった年ではあるのですが、実質無利子無担保融資ゼロゼロ融資の推進によって、55兆円の資金繰り支援を行いました。結果として中小企業の返済能力(借入金から手元現金を引いた実質有利子負債をEBITDAで割った返済能力)は10年ぶりの水準に低下して今後返済の本格化で息切れする懸念が出てきています。※(7)

 

6波となった新型コロナウィルスの扱いについて明確な指針を整えて経済的な影響を最小限に抑える施策をとっていかなければ、飲食宿泊サービス業やその他影響受ける特定の業種においては特に借入金の返済段階に突入するため財務状況の悪化も懸念される状況です。

私自身、事業再生の仕事を過去にやってきましたが、今後借入金の返済についての金融機関調整が必要になる社会的な情勢になってくることもあり、再生の仕事がまた増えてくるように思います。過去に事業再生により延命した企業が「ゾンビ企業」などとも呼ばれ日本の生産性向上の阻害要因と言われたことも鑑みると、マーケティングとイノベーションの促進、及び企業の統廃合による生産性の向上によって付加価値を生み出せる企業を生み出すような事業再生支援が求められるところです。

 

上場企業に関するトピックとしては4月から予定される東証プライム市場への上場予定数が1,841社に上るということです。東証1部のうち8割強が移行していく状況です。この市場の再編には上場基準を厳しくして市場における企業の新陳代謝を促す狙いがあります。市場からの評価が低い企業が安住できない環境を作るということです。※(10)

東証プライム市場1社あたりの時価総額(中央値)は599億円と言うことで、ニューヨーク証券取引所やナスダック証券取引所のグローバルセレクトの3分の1以下と言うことです。3兆ドル(340兆円)を超えるアップルを筆頭に巨大企業が犇全体を押し上げる米国の市場に対して、日本のトップはトヨタ自動車で37兆円程度です。突出する企業も少なくデジタル化の遅れや牽引企業の不在も背景にあります。※(11)

また、東証1部に上場している約2200社の中で株価が解散価値を下回るPBR1倍割れの企業が49%も存在します。投資家が求めるリターンを上回る利益を上げられていないと言うことを意味しています。これはすなわち、解散してしまったほうがマシ(事業を廃業して資産を全部現金化した上で株主に分配をしたほうが株主にとっては利益が出る)ということになります。それだけ日本の経営力が信頼されていないと言う事であると言うこともできるでしょう。※(13)

 

日本企業全体として、海外と比較すると特に稼ぐ力が足りていないことが大きく影響していると思われます。マーケティングとイノベーションに対する注力、この点で言うとソニーは輝かしい復活をとげましたが、2001年の東京モーターショーからトヨタ自動車と共同開発をしたコンセプトカーを土台として将来ビジョンを持ってEVの開発を続けてきたと言うことです。

ソニーのEV車である「ビジョンS」は車体製造をオーストリアの会社に委託し基幹部品はドイツの会社と協業をすると言うことで、ソニーは車両設計のほか画像センサーや通信システム、エンタメ設備などを得意分野に集中すると言うことです。※(6)

このように自社の強みを活かしながら中長期のビジョンを磨いて、日本に限らないパートナーとの連携によって世の中に貢献するものを生み出す姿勢は今の日本全体の中で不足している姿勢かもしれません。

もちろんソニーにしても現在のような輝かしい時期だけではなかった中で、将来のビジョンを持ちながら継続して開発を続ける地道な姿勢と、大きくジャンプして将来を展望するビジョナリーな姿勢と、「深化と探索」と言う両利きの経営を実施してきた成果なのかもしれません。

 

いずれにしても、マーケティングとイノベーションの促進を進める圧力が日本の市場全体にかかることが今の日本経済にとって必要なことでしょう。

この点ではプライム市場など市場の再編や、日本企業の役員のダイバーシティーを求める動き(日本の女性の役員比率は1割程度で、欧州を中心に3割を超える国も存在するなど海外と比べると見劣りする)などはマーケティングとイノベーションの促進への圧力になるかもしれません。※(8)

 

日本経済は、企業の経営力のみならず人口構造も将来の弱含みを示唆しています。75歳以上の独身女性数は2030年には800万人を超えると言うことです。今後の10年間で130万人も増えると言うことです。少子高齢化が進んでいく中で、寂しく老後を迎えてしまう方々が増加することも日本の経済のみならず社会にとって良いことではありません。※(5)

 

また、米国における消費者物価指数(12月)の前年同月比上昇率が7%を超えている状況の中、日本の国内景気の状況は思わしくありません。景気ウォッチャー指数などは多少の改善を見せてはいますが、計測時点が第6波の前のタイミングであったこともあり、今後の新型コロナウィルスの影響による落ち込みが懸念されます。※(4)(1)

2022年の世界全体の実質成長率は4.1%と言う見通しが出ています。日本はコロナワクチンの2回目接種が進み経済活動が盛んになるとして0.3%上方修正の2.9%成長と予測されています。他の国と比較すると低いのですが、前向きにとらえてやれることを積み重ねていくしかありません。※(2)

今後、借入金の返済段階に入る中でコロナで影響受けた特定の企業の倒産件数の推移については注視していく必要があるでしょう。また、上場企業も含めた日本企業のマーケティングとイノベーションの推進を期待したいところです。

 


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