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「今月の深掘り経済指標」【上場株時価総額】

経済トピック
2022.01.18

「KCクラブ経済号について」
毎週金曜日に配信されるKCクラブとは別に、KCクラブ経済号として経済に特化したコンテンツを月に1度配信しております。
経営者・経営層のみならず、ビジネスパーソンにとって経済動向を知ることはとても重要なことです。KCクラブ経済号では堅苦しいイメージのある経済を身近な事例を交えて分かりやすく解説していきたいと思います。

 

 

「今月の深掘り経済指標」【上場株時価総額】

 

今月取り上げる経済指標は、「上場株時価総額」です。市場毎の株式の時価総額はその市場に上場している企業の時価総額の合計で、その市場の規模や推移を知ることができます。国内で使用される代表的な指標として「東証一部上場株時価総額」があります。日本を代表する企業のほとんどが東証一部に上場しており、この指標を見ておけば日本の株式市場の動きを読むことができますし、個別銘柄の市場における存在感を知ることができます。

 

・『東証一部上場株時価総額』(2021年末):728兆4245億円(前年比9.2%増、年末としては過去最高)
例えば、日本の会社で一番時価総額の高い会社はトヨタですが、2021年末の時価総額は35兆3593億円です。東証一部上場株時価総額(以下上場株時価総額)は728兆4245億円なのでトヨタ一社で東証一部の約5%を占めることが分かります。なお年末時点におけるトヨタの時価総額は2位のソニーの2倍以上で、他の車メーカーと比較してもホンダが約5兆8500億、日産が約2兆3000億、スズキが約2兆2000億、スバルが約1兆6000億、マツダが約5600億 と他の企業を圧倒していることが分かります。しかし電気自動車で有名なアメリカのテスラは約125兆円とトヨタの約4倍と時価総額で大きな差があり、いかに市場の期待が大きいかが伺えますね。創業者のイーロン・マスクが世界有数のお金持ちになれたのもテスラの時価総額が巨額になっていることが要因です。
上場株時価総額は前述した通り2021年末で728兆4245億円となりました。これは前年末比9.2%増となっており年末の時価総額としての過去最高を更新しました。2021年の株式市場はワクチン接種の遅れやデルタ株の感染拡大、年末のオミクロン株への不安などネガティブな要素もありました。しかし経済活動の正常化への期待や製造業を中心とした業績改善、また自民党総裁の交代による新たな経済政策への期待感の高まりもあり、結果的に一年間で大きく時価総額を伸ばしました。なお日経平均株価(225種)は史上最高値だった1989年(3万8915円87銭)以来、32年ぶりの高値となりました。

 

・『日経平均株価』(2021年末):2万8791円71銭(年末としては史上最高値だった1989年以来、32年ぶりの高値)
日経平均株価は過去最高値ではないのに、上場株時価総額が過去最高になっているのは、当時と比べて上場企業数が増えていることなどが要因です。
上場株時価総額の推移を見ていると株主がどれだけ利益を得ることができたのかも分かります。例えば2012年12月に発足した第2次安倍政権におけるアベノミクスで株価は大幅に上昇しました。発足当時の大納会2012年末の上場株時価総額を見てみると296兆4429億円となっております。当時と比べて2021年末の上場株時価総額は約430兆円増加しています。
・2012年12月末:296兆4429億円
・2021年12月末:728兆4245億円
⇒差額:約430兆円
この430兆円を株式の含み益だと考え、ざっくり日本の人口で割ると一人当たり340万円となります。勿論株主は個人だけではありませんし、外国人も含まれているため正確な数字ではありませんが、ざっくり見てもこの10年近くで相当な含み益が発生しています。
株式の保有は富裕層に偏っていることもあり、富裕層がこの10年の株高上昇局面でいかに資産を増やしたのかが分かります。
株価が上がると百貨店の高級腕時計売り場や宝飾品売り場が活況になります。それは持株の価値が増えた富裕層の消費が活発になるためです。資産額が増加することで消費支出が増えることを経済用語で資産効果と呼びますが、株価が上がって高級腕時計が良く売れるのはまさしくこの効果です。

 

東証は4月に再編され、東証一部、東証二部、ジャスダック、マザーズの4つの市場がプライム、スタンダード、グロースの3つになります。最上位のプライム市場では上場する銘柄を絞り込み、より成長が期待できる企業を集めて海外の投資家も呼び込むというねらいがあります。
今年の干支は寅ですが、証券業界に伝わる「相場の格言」では、寅年は「寅、千里を走る」と言われています。天井をつけると言われている辰年に向かって上昇サイクルへと向かうという意味です。年始早々オミクロン株の感染が拡大していますが、今年は一体どんな相場になるのか注目したいところです。

 

 

「今月のKC景気指標ピックアップ」

 

■現金給与総額(全産業)

厚生労働省が発表している毎月勤労統計調査によると、11月の1人当たり現金給与総額は28万398円で前年同月と同水準でした。内訳を見ると基本給を含む所定内給与は0.3%増、残業代など所定外給与は2.7%増と増加していますが、ボーナスなど特別給与は7.9%減となっています。所定外労働時間は増加している中で、一部企業の業績悪化が影響しているようです。
なお物価変動を考慮した実質賃金でみると前年同月比1.6%減と3カ月連続でマイナスになっております。牛丼の値上げやガソリンスタンドの価格表示を見るといよいよ日本でもインフレの波が押し寄せてきていることを実感します。年明けも食パンや食用油など値上げラッシュが続き、消費者にとって厳しい冬となりそうです。

 

 

■新車販売台数
12月の国内新車販売台数は前年同月比11.4%減となりました。秋以降、前年同月比で9月32.2%減、10月31.3%減、11月は14.3%減と推移していたため、改善傾向ではあるものの、依然として半導体を中心とした部品不足の影響が出ています。
2021年通年では前年比3.3%減の444万8340台と3年連続のマイナス、2年連続の500万台割れとなっています。年間では、東日本大震災の起きた2011年(約421万台)に次ぐ低水準で、リーマン・ショックの影響で落ち込んだ2009年(約460万台)を下回っています。
先日カーディーラーに行った際に、気になった車種の納車までの期間を確認したところ半年待ちとのことでした。短期的には販売減は需要の落ち込みよりも生産面の問題が大きいので、部品供給さえ戻ればある程度の水準まで戻ると予想されます。

 

 

■旅行取扱状況(前年比)
11月の旅行取扱状況(前年比)は13.7%減と10月の22.1%減に続き2カ月連続のマイナスとなりました。緊急事態宣言の時期が長かった2021年3月~9月は前年を上回っていたのに、新規感染者数が抑えられ人流が増えてきた秋口にマイナス転じるのは違和感がある方もいると思います。これは昨年の反動によるものです。覚えている方もいらっしゃると思いますが、2020年10月は東京がGoToトラベルの対象に加わった時期です。当時はしばらく閑散としていたホテルや空港が急に賑わいました。
2021年秋から年末にかけ人の動きは活発で、出張時に利用する飛行機は減便の影響もあり満席の状況が続いていました。オーバーブッキングによる振替のアナウンスもかなり久しぶりに聞いた気がします。年末年始も人の出が多くいよいよ本格的に旅行需要も戻るかと思っていた矢先のオミクロン株感染拡大という状況です。今週松山に向かう飛行機に乗りましたが、席はガラガラでした。一ヵ月前の同じ曜日の同時刻の便に乗った際はほぼ満席だったので第6波の影響が出ているのを感じます。
観光業界の方に聞くとワクチン接種も進み満を持してという心境だったようで、精神的にもキツイとおっしゃっていました。明けない夜はないので何とか頑張って欲しいものです。


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