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今週の経済の動きと経営の切り口~インフレ対応に劣る日本企業~

経済トピック
2022.01.28

「今週の経済の動き」については、「今週の日経新聞の数字トピック」と合わせてお読み頂くことで、より理解が深まる構成になっております。「数字トピック」に関連る数字があるものは、トピック番号を※()で番号を記載しておりますので、ぜひ参照くださいませ。

 

 

日本の12月の消費者物価指数は前年同月比0.5%上昇しました。※(1)

 

 

 

 

 

 

 

 

出典:日経新聞 1月21日(金) 夕刊 1面 

 

欧米を始めとした国が軒並みインフレ傾向にある中で、日本の消費者物価もようやくプラスに転じましたが、その上昇は微々たるものです。それもそのはず、需給キャップが27兆円(2021年7月~9月期)となっており、日本は圧倒的に需要が少ない状況となっています。

 

もともとワクチンの遅れから日本の経済の回復が遅れてきたわけですが、それが3回目のブースター摂取においてもまた起ころうとしています。オミクロン型の感染拡大によって、保育園の全面休園数も327か所と第5波時(21年9月)の185か所を上回っており、子どもの預け先がなく出勤できない保護者も増えています。このように社会機能が維持できないことも経済の回復が遅れる要因の1つです。

※(22)

 

一方で企業が調達をする原材料等については、企業物価指数や輸入物価指数の影響によって高止まりしています。
小売りなどにとって売り上げに直結する消費者物価は0.5%とあまり上がらないものの、仕入れの原価となる企業物価指数(8.5%)や輸入物価指数(41.9%)は上昇しています。

 

 

結果として、国内の企業の収益を圧迫されることとなり、賃上げを要請している日本の動きがより効果がなくなってしまいます。
企業収益が圧迫されると言う事は、付加価値が圧迫されることに他ならず、付加価値を原資とした賃金が上がる道理がないからです。

結局は非常に原則的な話になるのですが、企業物価や輸入物価指数が高いか、ら消費者物価指数が高いのではなく、価値のある商品サービスを生み出すことによって結果として世の中の価値を向上させるマーケティングとイノベーションが大切だということです。

 

付加価値を上げず、マーケティングとイノベーションがない状態の中で賃金だけをあげようとしても土台うまくいくわけがありません。付加価値はほぼ粗利といっても差し支えないため、売り上げである消費者物価が上がらずに、仕入れである企業物価指数や輸入物価指数が高まっている状況では付加価値は圧迫される一方です。

 

付加価値が圧迫される中で、マーケティングやイノベーションによって付加価値を上げることもなく、賃金を管制主導で上げていく事は不可能と言っても過言ではないでしょう。付加価値に占める人件費の割合は労働分配率といいます。落ちてゆく付加価値の中で人件費を同額かそれ以上に上げようとすると労働分配率が高まり企業の利益が圧迫されていきます。

 

 

株主に有利な資本主義が推進されてきた結果、配当金や自社株買いなどの株主還元はGDPが成長しないこの30年間の間に約4倍に増えました。

 

企業が生み出す付加価値が増えない中で、資本家の取り分が増え、給与も上がらない状況です。

国内大手企業の21年の賃上げ率は1.84%と8年ぶりに2%を割り込みました。※(10)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※出典:厚生労働省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」

 

 

株主が、企業の付加価値を上げて働く人に対する労働分配を適切に行うことを意識したガバナンスが行われればそれこそが適切な資本主義ではないかと思います。

 

お金を追う株主の考え方が変わらず、株主還元等の配当等が増加している状況の中で、賃金が増える道理はないのです。

賃金を増やすためにも、付加価値を生み出すための人材投資や研究開発、設備投資、システム投資などの生産性投資が必要です。
それは、国の政策もさることながら、個別の企業においても行うべきことです。付加価値を上げるためのマーケティングとイノベーション、それに必要な投資を実行していくことが経営の実践に他ならないと言うことです。

 


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