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「今月の深掘り経済指標」【転入者数・転出者数】

経済トピック
2022.02.09

「今月の深掘り経済指標」【転入者数・転出者数】
今月取り上げる経済指標は、「転入者数・転出者数」です。「転入者数」は他のエリアからそのエリアに住所を移した人の数、「転出者数」はそのエリアから他のエリアへ住所を移した人の数を表します。転入者数>転出者数であれば「転入超過」、つまり出ていった人よりも入ってきた人が多い状態。転入者数<転出者数であれば「転出超過」、つまり入ってきた人よりも出ていった人が多い状態となります。

今年も1月28日に2021年の人口移動報告が公表されましたが、大きな変化としては東京一極集中が緩和されていることです。2021年に東京都の「転入超過」(転入者数-転出者数)は5433人と比較可能な2014年以降で最少となりました。コロナ前は7~8万人の転入超過だったことを考えるといかに減少しているかが分かります。なお東京23区に限って見ると初めて転出が転入を上回る「転出超過」となっており、都心部ほど変化が大きいことが伺えますね。

東京の一極集中が緩和されれば、地方の人口が増加し活性化することに繋がると期待されますが、現状ではそこまでの影響は無さそうです。

と言うのも、東京からの転出先は埼玉、千葉、神奈川の3県への流入が半分以上を占めており、依然として東京圏で生活する人が多いからです。

 

東京に埼玉、千葉、神奈川を加えた「東京圏」は8万1699人の転入超過になっています。2020年から1万7544人減ったものの、高い水準を保っています。
テレワークが定着し、出勤は週に1~2回という人も増えていると思います。毎日、満員電車で片道1時間の通勤は厳しいが、週に1~2回だったら我慢して郊外の広い家に住みたいという人が増えているだと思います。
またサービス業は依然として東京に集中しており、専門的なサービスを受けたいという際にも東京周辺の3県に住んでいるといざという時に便利です。

 

私自身、現在は埼玉県南部に戸建ての自宅を構えています。都心にある会社のオフィスに出社するのは月に2~3回しかありません。それ以外は北海道から鹿児島まで全国にあるお客さま企業を訪問しているか、自宅でテレワークをする仕事のスタイルです。
オフィスに出社する頻度を考えると、都心に住む必要性は感じません。しかし、月数回でも出社するという前提を考えると、北海道や沖縄に住むというのはちょっと負担ですし、全国のお客さま企業を訪問することを考えても新幹線の駅や空港から遠いというのは不便です。また東京に本社を構えるお客さまもいるので、出社しなくても東京に居ることあります。東京周辺の郊外の戸建てに住むというのは、自分の仕事環境やライフスタイルにマッチしていると感じています。

ただ最近では、東京周辺の3県以外にも山梨や北関東への転入は徐々に増加しています。統計の数字を見ると47都道府県では転入超過だったのは東京、神奈川、千葉、埼玉など10都府県。このうち群馬、山梨、茨城の各県は2020年の転出超過から転入超過に転じました。新幹線や特急の費用を自分で負担しなければいけない状況でも頻度が少なければ、何とかなるという人も増えているのではないでしょうか。

 

このような地方に移住するという流れを支援する企業も増え始めています。ヤフーでは2022年4月1日から、社員一人ひとりのニーズにあわせて働く場所や環境を選択できる人事制度を拡充。これまでは居住地は出社指示があった際に午前11時までに出社できる範囲に限定し、交通費も上限を片道6500円/日、15万円/月としていましたがこれを撤廃。日本国内であればどこでも居住できるようにし、特急や飛行機、高速バスでの出社も可能にする予定です。今後は同様に良い人材を確保するために、人事制度を見直す企業も出てくるものを見られ、『転職なき移住』をする人も増加してくるかもしれませんね。

金子恭之総務相は28日の記者会見で「過度な東京一極集中は、災害リスクや、地方における社会の担い手不足などの観点から、是正が喫緊の課題だ」「都市部から地方への人の流れを一層強くしていく」と述べており、この流れは続いていくものと思われます。

 

 

 

「今月のKC景気指標ピックアップ」

 

■マンション契約率(%)
2021年12月のマンション契約率を見ると、首都圏・近畿圏ともに73.5%と好不調の目安と言われている70%を超えています。首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)で去年1年間に発売された新築マンションの1戸当たりの平均価格は6260万円と、バブル景気の時期の1990年を超えて過去最高となっております。2021年12月の東京都区部の中古マンションの1㎡あたりの成約価格は 95.61万と直近の底値をつけた2020年4月から僅か20カ月で1.25倍の価格になっています。
都心のタワーマンションの価格を見るとちょっと引くくらい高いですね。こんなに高いマンションを誰が買っているのかというとまずは富裕層です。2億円以上のマンション購入層のおおよそ7割はキャッシュでの購入を検討しているということです。また富裕層以外で最近タワーマンション購入が増えているのが、「パワーカップル」と呼ばれる共働き世帯です。世帯年収が高く、消費意欲が旺盛なため「ちょっとがんばって、憧れのタワマンを購入」というケースが多いそうです。
しかしここまで上がると、流石に一般人には手が届かない高嶺の花になりそうですね。

 

■新発10年物国債利回り(長期金利)
長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが0.2%を超え、6年ぶりの高水準となっています。日銀が長期金利をゼロ%程度に固定する「長短金利操作」(イールドカーブ・コントロール=YCC)を導入して以降では最も高い水準です。
要因としては米連邦準備理事会(FRB)が3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の引き上げに踏み切る公算が大きくなり、米国債だけでなく、世界的に金利上昇圧力が強まっていることがあります。
長期金利は固定型の住宅ローン金利との連動性が高く、日本の3メガバンクは2月適用分の住宅ローン金利をそろって引き上げました。長期金利の上昇が続けば住宅ローン金利の更なる上昇を通じて、個人の消費マインドなどに影響が出る懸念がありますね。

 

 

■生産指数・集積回路(前年比)
12月の生産指数・集積回路は前年比18.4%増と17カ月連続のプラスとなっています。4月以降は平均で20%を超えており、堅調を維持しています。コロナ禍のテレワーク需要などでデジタル製品の需要が増え、世界的に半導体不足が続いています。
製造業のお客さまの話では昨年の夏場は相場の10倍の価格で半導体を買わざるを得ないほどひっ迫していたようです。現在は当時と比べればひっ迫度合いは緩和したようですが、依然として半導体は不足しており、調達に苦戦しているようです、
世界半導体市場統計(WSTS)によれば、2021 年の世界の半導体市場規模は前年比25.6%増、2022 年も8.8%増と増加の予測となっています。デジタル化に伴う需要は底堅く推移しそうですね。


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