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「今月の深掘り経済指標」【出生数・死亡数】

経済トピック
2022.03.09

「今月の深掘り経済指標」【出生数・死亡数】

今月取り上げる経済指標は、「出生数・死亡数」です。読んで字のごとくですが、国内で生まれた新生児の人数と亡くなった方の人数を表します。厚生労働省が発表している人口動態統計の項目の一つで通年の数字は翌年2月に速報値が発表され、6月に確定値が発表されます。人口動態統計には出生数、死亡数のほか、婚姻件数、離婚件数などの統計も記載されています。なお、速報値の数字は外国人も含めた日本全体の数字ですが、6月の確定値には日本人のみの数字が分かれて記載されています。

2月25日に発表された2021年の出生数は84万2897人(外国人含む)と前年から3万人近く減少し6年連続で過去最少を更新しました。日本人だけなら80万~81万人程度となった見込みです。日本人出生数80万人割れは免れたようですが、出生数が100万人を初めて割り込んだのは2016年(97.7万人)なので、5年で2割近く出生数が減少したことになります。
国立社会保障・人口問題研究所の中位予測では2021年の出生数は88.6万人(2017年推計)となっており、推計して数年しか経っていないにもかかわらず予想を大きく下回る結果となっています。推計は長期になるほどブレが大きくなることを考えると現在予想されているよりもずっと早く日本の人口減や少子高齢化が深刻になる可能性は高いと言えます。

出生数と同時に発表された2021年の婚姻件数は51万4242組(前年比2万3341組減)と戦後最小となりました。婚姻件数は出生数の先行指標となるため、その観点からも少子化が加速することが予想されます。婚姻件数は戦後のピーク(1972年:109万9984組)と比較して半減しています。2020年の国勢調査による生涯未婚率は男性25.7%、女性16.4%と、男性は4人に1人、女性は6人に1人が生涯未婚という結果が出ています。過去の統計を見ると1960年までは男女ともに生涯未婚率は1%台、そこから徐々に上昇するものの1990年では5%前後に留まっています。ところが1990年から2000年にかけて男性の生涯未婚率は12.6%と倍増し、そこから男女ともに増加傾向が続いています。日本経済の減速と反比例するような形で、未婚率は上昇していることが分かりますね。
婚姻件数の減少はコロナ禍で出会いのきっかけが減ったこともあると思いますが、根本的には日本の経済が停滞し所得が減少していることが原因だと思います。

政府は4月から不妊治療に対して保険適用することを決めました。また来年の4月には子どもに関する政策を集約する「こども家庭庁」を発足させます。私も3人の子供を育てている立場として子育て支援の充実は喜ばしいことだと思いますが、安心して結婚し子育てできるような経済環境を整備することが何よりも重要なのではないかと考えます。

 

「今月のKC景気指標ピックアップ」

■米国・非農業部門雇用者数
2月の米国非農業部門雇用者数は市場予想の40万人を大きく上回る67.8万人となりました。FRBは現在の雇用状況を自らの使命の一つである「最大雇用」の状況にあると判断しており、利上げの条件が整ったと考えられます。また2月の全米の平均時給は前年同月に比べ5%以上の伸びとなっており、人手不足だけど賃金が上昇しない日本との差を感じますね。米国では2月末には観光地でタクシーに長蛇の列ができるなど、消費は旺盛のようです。しかし、前年同月比7.5%増という40年ぶりのインフレや、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油高、そして利上げなど懸念要因は少なくありません。ここで米国経済が失速するのかそれとも引き続き世界経済を牽引していくのか、当面米国の雇用統計から目が離せません。

 

■原油価格
ロシアのウクライナ侵攻が経済的にも多方面で影響を及ぼしています。その最たるものが原油価格の高騰です。ロンドン市場の北海ブレント原油先物は7日に1バレル139ドル台に急伸しました。2008年7月の史上最高値である147.5ドルに迫る勢いです。原油はエネルギーに限らず、世の中で幅広い分野で使用されておりこの状況が続くと世界経済に大きな影響が出そうです。ダイレクトに原油価格の影響を受ける産業としては物流業が挙げられます。日本の物流業は元受け企業をピラミッドに多段階の下請け構造が出来上がっており、そのような背景から値上げをするハードルがとても高いと言われています。元々経済基盤が弱い企業も多く、急激な外部環境の変化に対応するための政策実施が急がれます。

 

■鉱工業指数・生産指数
日本経済全体の先行指標と言われており、エコノミストも動向を注視している鉱工業指数・生産指数ですが1月の結果は季調95.2(2015年:100)、前月比-1.3%、前年比-0.9%という結果になりました。業種別に見ると落ち込みが大きいのが自動車関連で、前月比-17.2%、前年同月比-16.6%と2割近く落ち込んでいます。自動車業界は半導体不足の影響が続いており、オミクロンの流行による国内工場の稼働停止が影響しています。需要は底堅くトラックでは新車の納期が一年を超えるものの出てきているようで需要に供給が追い付いていないようです。国内新車販売台数(軽自動車含む)も2月は、前年同月比18%減と8カ月連続で前年同月を下回っています。トヨタ、日産では今月に入りロシアの工場の稼働停止を表明しており、日本の主力産業である自動車業界の先行きも不透明になっています。


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