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食糧価格最高値更新で新興国の政情不安懸念

経済トピック
2022.04.15

国連食糧農業機関(FAO)が8日発表した3月の世界の食料価格指数(201416=100)は159.3と前月比17.9ポイント上昇し、2カ月連続で過去最高値を更新しました。

実は、現在の食糧価格の高騰はロシアのウクライナ侵攻だけが原因ではありません。経済成長を続けている中国が家畜の餌のために穀物の買いだめを進めていることや、脱炭素のためのバイオ燃料に大豆や菜種を使用するなど、構造的な問題から元々穀物価格は上昇していました。そこに今回のロシアのウクライナ侵攻が拍車をかけた形です。

 

穀物の生産量で見るとロシアは世界4位、ウクライナも9位と共に世界の主要な生産国です。特に小麦の輸出ではロシアとウクライナを合わせると世界全体の約3割を占めています。ロシアに対する経済制裁は今後より強化されることが予想され、ウクライナは国内が混乱しているため両国からの輸出が滞ることは必至です。ハンガリーなど他の穀物輸出国でも輸出を禁止するなどの動きが出始めており、当面は世界中の食糧価格は高止まりすることが予想されます。

またアメリカの利上げにより新興国の通貨が売られて通貨安になり輸入物価が上がることも新興国内の食糧やエネルギーの価格高騰を一層加速させます。

 

エネルギーや食糧のような生活必需品の価格高騰は市民の生活を直撃し、その不満の矛先は政治に向かいます。

2011年に中東で起きた民主化運動「アラブの春」もロシアやウクライナが10年に実施した穀物の輸出制限に伴う食料価格高騰への不満がきっかけでした。

既にペルーのリマではエネルギーと食糧の価格が急騰していることに対する抗議のデモが発生し、政府は非常事態宣言を出すなど対応に追われています。

中東や南米、アフリカなどは常に政情が不安定なのでこのまま物価高が続けば当時のような反政府デモが起きる可能性が高いと思われます。

 

しかし、この状況で一番気になるのはやはり中国の動向です。中国は長年共産党の一党独裁を続けています。この数十年は順調に経済が成長し、生活が豊かになったことで市民としてもそれほど大きな不満はありませんでした。しかし近年は経済成長にも陰りが見えてきており、共同富裕の名の元にかなり強引な改革を続けています。

そのような状況のなかで強烈なインフレが起きたら政権に不満を持つ市民も増えるはずです。11日に発表された中国の3月消費者物価上昇率は前年同月比1.5%と8%近い欧米と比べ小幅の上昇に留まっています。ゼロコロナ政策を進める中で景気に勢いがないことが原因だと考えられます。しかし世界中であらゆるモノの物価が上がっている状況を見ると中国も更なる物価上昇は免れないでしょう。

ロシアがウクライナ侵攻を始めてから中国の台湾進攻を警戒する声が高まっていますが、インフレを上手く抑え込むことができないと共産党そのものの存続すら危うくなる可能性があります。当面は中国がインフレにどう対応するのか注目したいところです。


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