企業経営において、新聞を読むことや外部環境を洞察する事は暗闇を歩く時に足元や遠くをライトで照らすようなイメージを持っていただくとわかりやすいです。
新聞には、短期的に重要な事実と、中長期的な影響を考える洞察の両方の記事があります。
短期的に重要な事実は、特に日本や世界全体に影響すること、および地域経済や、業界に関連することについて注意する必要があるでしょう。
日々仕事をしていく中ではこのような「直接的に関係があり、短期的にインパクトがある情報」が大切です。足元を明るく照らすライトといったイメージです。
一方で、「経営」においてこの先の会社の方向付けを検討するときには、短期的に重要な事実だけではなく、むしろその事実等を踏まえた「今後の動向についての考察と洞察」が重要になります。経営という目線を持って中長期を考えるときには遠くをライトで照らしていく必要があるのです。
短期的な視点だけを持って経営をしていくのは暗闇を足元だけ見て歩いているようなものです。だからこそ、少なくとも顔を上げて先を見る意識が必要です。
いくらライトで照らしたところで、未来になればなるほど先は不確実になっていきます。例えばロシアのウクライナ侵攻がいつ終わるのか、そしてそれが中国の台湾問題に与える影響はどうなるのか、それらが自社の会社の方向付けに与える影響は?といったことも足元を明るく照らして見える事実を正確に捉えた上で、先を洞察して考えるしかありません。
一方で、例えば日本の人口構造問題等はかなりの精度で将来まで明るく照らすことができます。そしてそのパターンはこの先20年程度は少なくともぶれる要素も大きくありません。
ライトを上向きにした上で、どの程度まで予測できる問題なのか、予測できないのであればいくつかのパターンを持って考えることが大切です。
極端な想定を言えば、台湾問題が発展し米国が軍事介入をしたときに日本が戦争に巻き込まれる可能性も否定できません。だからといってそのような未来がくっきりと明るく見えているわけではありません。いくつかあるパターンの中の1つでしょう。
未来に行けば行くほど、実現する可能性がある範囲が広くなります。それはある程度解像度高くライトで照らしながら自社の経営にとって悪くなりそうなパターン(ダウンサイドリスク)を想定し、それに対して必要な心の準備をすることが大切です。
心の準備ができていれば、精神的に動揺することがありません。もちろん日本で有事が起きた場合には経済的にも生活的にも困難を避けられないでしょうが、そのような時に心を平静に落ちつかせて対応できるかどうかが健全に経営を進められるかの分かれ道になります。
一方で、どのようなパターンになっても完全に対応する事は経営上できることではありません。
逆にそのようなことをやっていれば足元の収益性は相当に悪化することになります。資源の最適配分ができておらず、過度にリスクヘッジに傾いているためです。
経営というものは未来に対してリスクを取るものです。だからこそ、どのようなリスクをとっているのかということを自覚しながら、その心の準備をしておくことが大切になるのです。新聞を読んだり外部環境の将来を洞察する事は、その将来におけるリスクを照らして自覚をするという行為に他なりません。
足元を明るく照らすライトで堅実に執行を進めるとともに、おぼろげな先を照らすライトと先を見据えたリスクへの自覚をもって経営に向き合いたいものですね。